あふぅとダメプロデューサー(続き)
もうすぐ私がこの事務所で働き始めて半年がたつ、業務をこなし仕事にも慣れてきた、だが…
「ポェー」「ナノッ」「クッ」「ウッウー」「ダゾッ」「ヤー」「モッ」
この事務所には『ぷちどる』という謎の生き物がいる、コンクリートの床に穴を掘る、額からレーザーを出す、等様々であるはっきり言うと人と共存するのが困難な…生き物ばかりであるその中でも一際目立つ存在が
「ナノッ!」
この金髪毛虫、あふぅであるこのぷち、躾がちゃんとされていないのか人の手から好物であるおにぎりを強奪するわ癇癪を起こして暴れまわるわ、あげくのはてに弱い者虐めをするわで好き勝手している状態だ
「ぽぇぇ~!ぷえーん」
そして今、あふぅから馬乗りでボカスカ殴られているぷちがゆきぽだ、ゆきぽはコンクリートの床をぶち抜くだけあって腕力はかなりある方だがあふぅに一方的に殴られている、臆病な性格故に反撃も出来ないんだろうあふぅはひとしきり殴り終えると気がすんだのかゆきぽの寝床の段ボールで汚いイビキをかきはじめた
「ぽぇぇ~ぷぃーん;」
いつもの事なので特に気にもせず、私はパソコンへ向かい続けた
そしてある日、いつものようにあふぅがゆきぽを虐めていた
「ナノッ!ナ~ハッハッハッ!」
「ぷいやぁぁぁ!ぷあああ!!」オロシテーコワイヨコワイヨー;
何故か開いている事務所の二階の窓、あふぅがゆきぽを窓の縁にたたせてスコップでつついている、ぷちは高い所が嫌いらしいので臆病なゆきぽにとっては耐え難い苦痛だろうぷいぷいと良い反応を見せるゆきぽを見て更に調子に乗るあふぅ
「ナーノ^^ナノッ♪」コイツオモシロイノー、エイッ!
パッカーン!
「ぽあっ!?ぷあっ…」
野球のスウィングのような形でスコップで叩かれたゆきぽ、そのまま事務所の窓から落下していく
「ぽやぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!ぷぎゅ」
水の塊が破裂したような音をたてゆきぽはそのまま絶命した
「ナッ…ナッ…ナノォ~」
おかしい、こんなはずじゃなかったの…ここまでするつもりじゃなかったの、ゆきぽごめんなさいなの
こんな風に後悔しているのだろうかおそらくそうではない、ゆきぽを殺してしまった事よりもこのあと律子から食らうであろう折檻を恐れているのだ、あたふた狼狽えるあふぅに私が駆け寄る
「あふぅ!!!」
事務所の外にも聞こえんばかりの怒号であふぅを怒鳴り付けた。
「ナノッ!?」
あふぅが驚いて跳び跳ねた、着地をし損ねて窓から落下しそうになる
私は慌ててあふぅをつかみなんとか事なきを得た
「ナノッ!ナノナノナーノ!?」
『お前が驚かすから危うく死にかけたの!さっさと誤るの!』そういわんとばかりにあふぅが私を捲し立てる、確かに驚かせたのは私だがあふぅの命を救ったのも私だ、少し位感謝されてもいいものではないのだろうか…
まあ今は其どころではない私はあふぅに言わなければならないことがある、それはゆきぽを突き落として殺した事、ぷちを、仲間を殺したぷちを事務所の皆が只で済ますはずがないだろうということ
すべて伝え終えると自分がしたことの重大さに気付いたあふぅが顔を真っ青にし冷や汗をかきはじめた、それでもゆきぽへの謝罪の念ではなくこの件をどうやって乗りきるか、足りない頭を必死に動かしているんであろうが
「只今戻りました~」
ぷちどるの総監督である律子が帰ってきた、あんたはもう終わりだあふぅ
律子の声を聞き、はじめの内は心臓が止まりそうな表情のあふぅだったがすぐに悪どい顔つきになり急に
「びゃー!!びぇー!!」オオナキ 大きな声で 泣き始めた
「あふぅ!?どうしたのあふぅ!」
それを聞いた律子が慌てて飛んできた
「あふぅ!…あっいたんですね、あふぅに何かあったんですか?」
私は何も言わず道路とは反対方向の路地裏側にある窓に律子をつれていく、下を除きこむとゆきぽが地面に真っ赤な花を咲かせて絶命していた
「おえっ…うぷっ」
思わず律子が吐き気を催す、当たり前だ今朝まで元気にお茶を飲んでいた事務所の仲間が惨たらしい姿をみたのだ、吐きそうになっても仕方がない
「これは…一体何があったんですか?」
「わかりません、大きな音が聞こえたので駆け付けるとこの有り様でした」
そんな会話をしていると急にあふぅが騒ぎだした
「ナノッ!ナノナノナノ!ナーノナノ!」
私の事を前足(?)で指しながら律子に何かを伝えれている、すると何かを察した律子が
「あふぅ…まさかこの人がやったっていうの?」
「ナノッ!」
そうだこいつがやったんだと言わんばかりのあふぅが大きな頭をぶんぶんと震わせた金色の毛からはフケが飛んで気持ち悪かった
「あなた一体なんてことを!」
律子が凄まじい剣幕で私に詰め寄る、それを見てあふぅがほくそえんでいた
私は何も知らないかのようにふるまった。ゆきぽが転落死した時デスクで作業を伝えた、その事を伝えると落ち着きを取り戻し始めた律子、そこで私は思い出したかのようにこう言った
「監視カメラを見てみましょう」
最近事務所に設置された監視カメラ、以前事務所が完全に留守になるということがあった時に事務所が荒らされるという事件がおこった。しかし盗まれた物は何もなく、盗聴器や隠しカメラ等も仕掛けられていなかった為に被害届けは出さなかった。しかし防犯の為にと監視カメラを設置することにしたのだ
律子と一緒にカメラを見てみるとあふぅがゆきぽをスコップで小突きまわしたあげく、叩き落としている映像が写っていた
「っ!」
あまりの衝撃に声にならない叫びを律子、当のあふぅは飽きてしまったのかはなちょうちんを膨らませていた、ついさっき殺したゆきぽの段ボールの中で
そのあと皆を集めて緊急集会を開き今回の事を伝えた、あふぅがゆきぽを殺した事、それを私のせいにしようとした事、あふぅ自身がその事を何も悪いと思っていないこと、それ聞いたアイドル達は泣き出したりショックで気を失う者までいた、事務所が異様な空気に包まれているなかでもあふぅはまだ眠っていた
あふぅがゆきぽにちょっかいを出している事は皆周知していたがこういった残酷な事をしたのは今回が始めてだった
あれから数日たつがいまだに事務所の空気は落ち込んでいる、その中でも律子はぷちの監督的な立場でありぷちの事を家族の一員のように考えていたので、表には出さないがショックはかなりのものだろう
「あの人が正しかったのかも…」
律子が弱々しい声で誰に聞かせるでもなく呟いていた
あふぅの処分は私の案で遠くに捨てるということに決まった、最初は殺傷分との意見があったが保健所がこんな訳の分からない生き物の処分を引き受けるはずもなく事務所の皆も自分で手をくだすのにためらいがあり、結局遠くに捨てるということに決まった
「すぴーすぴー…」
睡眠薬おにぎりを食べ眠っているあふぅ
ブロロロ…キッ 数時間ほど車を走らせて山の中についた、私は眠っているあふぅを木に縛り付けると飲みかけのペットボトルのお茶をあふぅにかけた
「ナノッ!?ナー?」
いきなり起こされ少し不機嫌なあふぅに腹がたったので頬をおもいきりたたいた
バチィン!
「ナビャ!ナー!ナノナノナーノ!」
頬をぶたれ一瞬怯むもすぐさま私に向かって飛びかかってこようとした、勿論木に縛られているので出来なかったが、もう一度ぶとうと手を振り上げた時物陰から『彼』が出てきた
「久し振りだな…あふぅ」
あふぅは誰か分からなかったのか少しの間呆けていたが思い出したようで
「ナー!ナノッ!ナーノナノッ!^^」ナンダオマエダッタノ?ハヤクコレヲハズスノクソザコ
あふぅ無視して『彼』は私にこういった
「苦労かけたな、本当にありがとう…○○」
「いいのよ…あなたのためですものこの子(害獣)があなたにしとことにくらべれば」
約半年前、仕事を辞めたので別れてほしいと彼から告げられた勿論お断りした、すると彼が涙を流し始め私の胸の中でなきはじめた
あふぅにはめられたこと、ゆきぽに裏切られたこと、それが原因で事務所を辞めることになった事、事の顛末をすべて聞いて彼の言うことを信用しなかった連中にも腹がたったが一番憎たらしいのがこの金髪毛虫のあふぅだ優しい彼をここまで苦しめたこの生き物が憎くてしかたなかった
その後彼と復讐の計画を立てた、事務所に侵入し監視カメラを設置するきっかけを作ったのは彼だあふぅがゆきぽに乱暴するまで待ち、事務所に居られない状況を作り、捨てるという名目で連れ出す、これが私の役割だ後はあふぅを彼がどうするかだけ
「あふぅ 聞いたぞ…お前ゆきぽを殺したんだってな、なんでそんなことしたんだ?同じぷち仲間だろ?」
「ナーノォ!ナーノーナーノナノッ!ナノッ!」ユキポトカシランノ!チョットタタイタラカッテニオチタシンダノ!アフゥハワルクナイノ!
「ナ~ナプェ!」ペッ
この屑毛虫彼に向かって唾をはきつけやがった、『ボゴォ』我を忘れて殴りかかろうとする私よりも先に彼があふぅの腹を打ち抜いた
「ナブェ!」
突然の暴力に驚き間抜けな声をあげるあふぅ間髪入れずに彼が追撃を始めた
「お前の!せいで!俺は!」バキィドガッボゴォ
「ナノッ!ブェ!ナビャッ」
みるみる顔面が腫れていくあふぅ、始めてみる彼の姿に少しだけ興奮してしまった
「お前みたいな奴は!生きていちゃ!生けないんだ!死ね!」
「グエッ!アビャ!ビエェェェェン!ビャァァァァァ」
凄まじい暴力に嘘泣きする間もなく本気泣きをしていた血と涙と鼻水を撒き散らしながら
ひとしきり殴った後、彼はあふぅに問いただした
「これで最後だあふぅ、俺をはめたこと、ゆきぽを殺した事、少しでも悪いと思っているか?」
「バッ…」
「ば?」
「バニィ~バニバニ~」
この期に及んであふぅは媚だした毛は金色のままなので発情期のそれではないようだ
「そうか…わかったよ さよならあふぅ」ボキィ!
「アベッ!」
首を蹴り抜かれたあふぅ、素人目からみても死んでいるのは明らかだった
あふぅの死体を片付けたあと律子に遠くの山に捨てたことを伝えたあと携帯を切った、少ししたら私は事務所を辞めるだろう、復讐を終えた今あの事務所に用はない
全てが終わり彼の顔を見てみると、少し寂しそうだったが晴れやかな顔だった
終わり
- 最終更新:2015-04-01 23:29:06