みなしごぷっち~こあみとこまみの場合~

765プロ。

あふぅ、いおに次ぐぷちどるの害獣、ゆきぽは去った。
そのことを知った、765プロの面々は――


「ちょっと可愛そうだぞ・・・」

「やっぱり、もう少し優しくしてあげれば良かったかな・・・」

「私が冷たくしたのがいけないんです~・・・」

「何言ってるの、あんなの床を壊すしか能がないし、いらないの」

「そうよ、普段はおとなしいって言ったって、そんなの猫を被ってるだけじゃない」

・・・意外に反応が割れていた。
まあ、穴掘りの習性が分かる前は、誰もが大人しくていい子だと思っていたし、見て見ぬ振りこそしたものの、あふぅやこあみ、こまみのゆきぽに対するいじめも酷いものだった。
同情の声が出るのも、頷けなくはない。
今さらそう言ったところで、もう手遅れなのだが。


そして、ぷち。

「くっ~;;くぅ~・・・;;」「うっうー」ナデナデ

悲しむ者と、慰める者。
ちひゃーは大好きなゆきぽがどこかに消えてしまったことを悲しみ、いおを失ったやよがそれを慰める。
例によって、プロデューサーがゆきぽを捨てたことは理解していなかったが。


―――しかし、これで、今度こそ765プロは平和になる。
プロデューサーと765プロの面々はそう確信した。
物理的に事務所に損害を与えるぷちはすべて消し去った。
もう心配はいらない・・・・


―――そう、「物理的」には。

翌日、プロデューサーが出勤したときのこと。

P「さぁ~て、今日も一日頑張りますか・・・・むっ」

事務所の玄関を見やる。
――ドアの隙間に、黒板消しが挟まれていた。

P(はぁ・・・)

ため息をつくプロデューサー。


―――やっぱり、765プロの平安の日々は遠いのかもしれない・・・。


ドアの隙間から黒板消しを抜き取ると、プロデューサーは中に入る。
今日はまだ誰も来ていない。
ぷち以外は。

P「―――こあみッ!こまみッ!!ちょっと来い!!!」

彼の怒声が事務所に響き渡る。

こあみ「と、とか~・・・」

こまみ「ちぃ~・・・」

おずおずと隅から出てくる。
いたずらをしようとしたくせに、急にしおらしくなりやがって、と彼は呆れた。

P「お前ら、また黒板消しをドアに仕掛けてやがったな?!
いたずらのために使うなって、いつも言ってるだろう!!!」

こあみ「とか・・・」

こまみ「ち・・・」

震えあがる二人。
これがもしプロデューサーが罠に掛かっていたら、どんな反応をしていただろうか。

元からこのこあみとこまみには、やたらとイタズラをしては人を怒らせることがままあった。
仮眠中のプロデューサーやアイドルの寝顔に落書き。
玄関にバナナの皮や雑巾をおいて滑らせる。あるいはロープでひっかける。
ドアの隙間に黒板消しを挟む・・・。

もっとも、これでもあふぅやいお、ゆきぽよりはマシだったのだ。
少なくとも、事務所の物品を壊そうとはしなかったから。
また、イタズラで大けがを負った者はいないし、人間の側も慣れてくれば、その内イタズラには引っかからなくなった。

ところで、もう一つのこの二匹の悪行はと言えば、あふぅと組んで他のぷちとケンカをし、いじめることだ。
特にゆきぽとやよは酷いいじめを受けていた。
しかし、これはあくまであふぅというガキ大将がいての話。
人にはイタズラをしたがるくせに、ぷち達にはあふぅがついていないとケンカも売れない。
全く理解できない精神である。

そして、あふぅ、いお、ゆきぽと、だんだん事務所からぷちが行方不明になっていくのを見て、二匹は震え上がっていた。
きっと人間がぷち達に、何か危害を加えているのだと。
そのため皆は、わざわざ注意などしなくても、それを脅しと受け取って、二匹は二度とイタズラなどしなくなるだろう。
―――そう考えていた。

甘かった。
やっぱりコイツらも、躾も何も効かないのだ、と彼は思った。

しかし、やっと落ち着いたと思った矢先、こあみこまみが人間にイタズラをしようとした。
その事実に、彼ははらわたが煮えくり返った。

P「オラァッ!!ちっとは身に沁みろッ!!!」グボッ ドガッ バキッ

こあみ「と゛か゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!」

こまみ「ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!」


数分後。

こあみ「」

こまみ「」

P「・・・・気絶したか」


―――プロデューサーは今のうちに、二匹を捨ててしまおうと決意する。


さて、どこに捨てようか。
もう遠くまで行くのはごめんだ、都内のどこかにしよう。プロデューサーはそう決めた。

しばらくして、大森ふるさとの浜辺公園。
プロデューサーはこあみとこまみにリードを着け、二匹を散歩するふりをしていた。
二匹とも気絶していたから、実質引きずっているようなものだが。

こあみ「・・・・・」

こまみ「・・・・・」

大したもんだよ、と彼は苦笑する。
あふぅやいおなら引きずるなと怒って襲ってくるだろうし、ゆきぽにやよなら逃げだすだろう。
この二匹ときたら、さっき殴る蹴るの暴行を加えて気絶したっきり、檻にぶん投げようが引きずろうが、ずっとこの状態だ。
時々脈を確認する。まだ生きているようだ。

P(ここでいいかな・・・)

さて、散歩する振りをしつつ、公園内の人気のない場所を探していたプロデューサー。
ようやく人目の届かない所を見つけたようだ。

リードは外しておき、人工の砂浜の隅に二匹を放置した。
もしバレれば罰金ものだ、さっさと捨てて帰ろう。

P「じゃあな、こあみ、こまみ・・・お別れだ」

そうつぶやき、公園を後にした。

二匹は相も変わらず眠りこけている。いや、気絶している。

こあみ「・・・・・」

こまみ「・・・・・」


―――プロデューサーよりも恐い人間がまだまだいることも知らずに・・・。


ザワザワ ナンダコレハ?
ペットガステラレテルノヨ ヒドイコトスルワネ
コンナノミタコトネエゾ ガイライセイブツカ?


こあみ「・・・・・と・・・・か・・・?」

こまみ「・・・・・ち・・・・ぃ・・・?」

二匹はようやく目を覚ました。
全身の痛み、そして周囲の騒がしさで。

男性「・・・おい、目を覚ましたみたいだぜ」

女性「本当に見たことないわね・・・宇宙人?」

少年「まっさかぁ・・・」

ワイワイ ガヤガヤ

周囲を大勢の人間たちが取り囲む。珍しい物好きの野次馬のようだ。

こあみ「とか・・・とか・・・!」ダッ

こまみ「ちぃぃ!」ダッ

二匹は大勢の人間に取り囲まれる恐怖に耐えられず、ついに逃げだした。

男性「あ、おい逃げるぞ!」

少年「待てーー!捕まえてやる!!」シュッ

少年の一人が振り竿を持ちながら追いかける。
すると、

グサッ

こあみ「と゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛?!!」

こまみ「ちぃっ?!」

少年が釣竿を振り回したとき、こあみの腕に釣り針が刺さってしまったのだ。

少年「一匹掛かったよ!ほーら、こっち来い!!」グイグイ

こあみ「と゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」ズルズルズル・・・

そのまま引きずられていくこあみ。

こまみ「ちぃ!ちぃ!!」ダッダッダッ

一方のこまみは、こあみを見捨てて逃げ出してしまった。

少年「よっしゃーー!一匹ゲットーーーー!!」

父親「こらこら、釣竿を振り回すんじゃない・・・お前、それをどうするんだ?」

少年「決まってんじゃん!家に持ち帰って飼うんだよ!!
これで自由研究はバッチリだね!!!」

父親「はぁ・・・」

その後、野次馬の中からソイツを譲ってくれないか、と少年に提案したが、少年は頑として譲らず。
結局、少年がこあみを飼うことになった。

こあみ「・・・・・と・・・・か・・・;;」ガクブル


こまみ「ちぃ・・・ちぃ・・・><」ゼーゼー

何とか公園を脱出したこまみ。
息を切らしつつ、追ってこられてはマズいと、やや小走りで道を進む。
しかし、どこに行けばいいのかは全く分からない。
事務所への帰り道など、当然分かるはずもなかった。

こまみ「ちぃぃぃ・・・;;」シクシク

歩きながら、妹を見捨てて逃げた罪悪感に蝕まれ、おいおいと泣きだすこまみ。
だが、今戻れば自分も人間たちに囚われてしまう。
とにかく安全な場所に着いて、落ち着いたら妹を探そう。
そう思い、再び歩き始めた。


一時間後。
とあるマンションの一室。
主婦が家事を終えて、娘らしき少女が夏休みの宿題を終えてのんびりとしていると、玄関のドアを開け閉めする音が響く。
父親と息子の少年が、散歩から帰ってきたらしい。

少年「たっだいまーーー!!」

母親「あらおかえり―――って、何よその生き物?!」

母親は仰天する。

こあみ「とぉかぁ、とぉかぁ;;」

息子の持っている大きめの虫かごに、見たこともないへんてこな生き物が入っている。
おそらく二頭身、なのに頭と目が異常に大きい。そのうえ人間のように服も着ていて、髪には髪留めまでつけている。
短い手足を振り回し、泣きじゃくっている。

父親「その・・・公園で拾ったんだ。どうやら捨てられたペットらしくてな。
そんなもの拾うなって何度も言ったんだが、自由研究の観察日記にコイツを使いたいって聞かなくて・・・」

少女「へー、カワイイ!お人形さんみたいだね」

母親「そうかしら・・・」

母親が気味悪がるのももっともだ。
こんな得体の知れない生き物を可愛がるのは、無邪気な子供ぐらいだろう。

少年「へへーん!とにかくおれ、今日からコイツの観察日記書いちゃうからね。
これで宿題もバッチリだ!!」

母親「エサも散歩も、アンタがやりなさいよ・・・」

母親はため息をついた。
前にも息子が昆虫をやたらと拾ってきたことがあったわね。こんなことならペット禁止のマンションに住んでいれば良かったかしら・・・
彼女は内心そう思った。

少女「お兄ちゃーん!この子といっしょに遊んでいい?」

少年「えーー?!これおれが拾ってきたのにー・・・」

母親「貸してやんなさい、減るもんじゃあるまいし」

少女「じゃ、いっしょに遊ぼうねー」

少年「ちぇー」

こあみ「とか・・・とか・・・><」

少女はこあみの頭を掴むと、リビングを出ていく。


少女は自分の部屋に入り、部屋の隅からおもちゃ箱を持ってくる。
その中から着せ替え人形を二体、着せ替え用の服を五枚ほど取り出す。
まだ小学校に入ったばかりなのだろう、そういった遊びからはまだまだ卒業できないようだ。

少女「ねーねー、あんたお名前はなんていうの?」

こあみ「とか、とか」

こあみだよ。
・・・そう言ったのだろうが、当然この少女にぷちの言葉を理解できるはずもなく。

少女「・・・・え~と・・・・。じゃ、リカちゃんって呼んでいい?」

こあみ「とか!とか!!」

だから、こあみだってば!聞いてよ!!

少女「そういえば、ずいぶん服、よごれてるね。ケガもしてるみたいだし・・・。
お着替えしよっか、リカちゃん?」

こあみ「とか!とか!!><」ブンブン

少女「ワガママはダメだよー。
ほら、すぐ終わるから」ヌギヌギ

そう言って、こあみの服を脱がせようとした。

こあみ「とかぁぁ!!!!」ジタバタ

手足を振り回して抵抗するこあみ。

少女「ほーら、暴れちゃヌギヌギできないでしょ」

結局、一分足らずで丸裸にされてしまった。

少女「なんかこの髪飾りもかわいくないねー。外しちゃおっか」シュルシュル

とあみ「とかぁ・・・・!;;」

少女「じゃ、これは服といっしょに捨てて、と」ポイッ

こあみの服と髪留めは、無残にゴミ箱へと捨てられた。

こあみ「とか・・・;;」

少女「じゃ、ちょっと待っててねー。
えーと、何がいいかなー・・・」ガサゴソ

しばらくおもちゃ箱を漁っていた少女。


その時。

ピンポーン

母親「はーい、ってあら、みおちゃん?」

少女2「こんにちはー、たまきちゃんいますかー?」

母親「はいはい、ちょっと待っててね。
たまきー、みおちゃんが遊びに来たわよー!」

少女「はーーい!」

こあみを置いて、少女は部屋を出ていく。

こあみ「とかー!!とかーーー!!!」

どこ行くの、服を着せてよ!
しかし、少女は聞こえていないのか、戻ってこず。

イッテキマース バタン!!

外に遊びに行ってしまったようだ。

こあみ「とかとか」ゴソゴソ

仕方なくこあみは、おもちゃ箱から服を漁ろうとする。

こあみ「とか・・・」ショボン

しかしお気に入りの服は一つもなかったようだ。
ドレスにワンピースと、やんちゃなこあみにとって、こんな服は動きづらくて仕方がない。

こあみ「とか!とかぁっ!!」ビリビリ

だんだんとこあみは腹が立ってきた。
腕に針を刺されて、無理やり連れてこられ、その挙句裸にされ、放置して出かけるなんて。
腹立ちまぎれに、人形用の服をビリビリに引き裂く。

こあみ「とかぁぁ!!・・・とか?」ガラガラガッシャーーン

他に壊すものはないかとおもちゃ箱をひっくり返すと、人形とクレヨンが出てきた。

こあみ「・・・とか^^」ニヤッ カキカキ

しばらくして、母親が部屋に入ってきた。

母親「ちょっと何よこれ・・・全く、部屋を片付けないで遊びに行っちゃって・・・。
・・・あら、アンタあの子と一緒に行かなかったの?」

こあみ「とか」

母親「じゃ、リビングに来なさいな、ここじゃ危ないから」

そう言ってこあみを虫かごに放り込む。

こあみ「とか」

特に嫌がりもせず、かごに入る。
そして寝始めた。

こあみ「と・・・か・・・zzz」

すっかりいい気分で。


それから一時間ほど経ち。
少女が遊びから帰ってくる。

少女「ただいまー」

母親「やっと帰ってきたの。・・・アンタ、出かける前に部屋の片付けするの忘れたでしょ?」

母親が少し怖い顔で、少女を睨む。

少女「え?そんなに散らかしてないよー?」

母親「何言ってんの、お部屋を見てごらんなさい。
言っとくけど、きちんと片づけするまで、オヤツはないわよ」

困惑しながらも部屋と向かう少女。

少女「へんだな~・・・・え?」

ドアを開けると、おもちゃ箱がひっくり返され、いたるところにおもちゃが散乱している。
慌てて片付けようとするが・・・

少女「あーー!!お人形さんがーーー!!!」

人形の服はビリビリに破られ、体中いたるところに落書きがされている。
近くにはクレヨン、そしてマジックペンまで何本か散らばっていた。

少女「お母さーーん!おかあさーーーん!!!」

母親「・・・ハイハイハイ、何があったのよ・・・?」

夕食の準備をしていた母親が、疲れた表情で娘の部屋へ入る。

少女「あたしのお人形さんとお洋服が、メチャクチャになってる!!」

母親「・・・はぁ?
アンタがやったんでしょ、それ?
言っとくけど、アンタが遊びに行ってから、あたし以外誰もアンタの部屋に入ってませんからね。
あたしが入った時は、もう散らかってたんだから・・・」

少女「・・・ねえ、あの子は?リカちゃんはどこ?!」

母親「え?お兄ちゃんが拾ってきたあの生き物?今リビングで寝てるわよ。
こんなとこに放置してたら、おもちゃでも踏んづけてケガするじゃない」

少女「きっとその子だよ!リカちゃんがやったんだ!!あたしこんなことしないもん!!!
このお人形さんなんて、おばあちゃんにおたんじょうびに買ってもらったんだもん!!!!」

必死に訴えるが、母親は少女の言い分を聞くどころか、堪忍袋の緒が切れたようだ。

母親「―――言い訳はいいから、さっさとお部屋を片付けなさい!!!!
晩ご飯も抜きにするわよ!!!!!!」

そして部屋を出て行った。

少女「わーーーーーーん!!!!!!!!」

一方、こあみはと言えば。

こあみ「とかぁ・・・zzz」

未だにグースカ寝息を立てていた。


そして、夕食の時間になる。

少年「よっしゃー♪観察日記の一日目、書けたよーー♪」

父親「あれが観察日記って・・・ただ絵を描いて、拾ってきたことをさらっと書いただけじゃないか・・・」

母親「小学生の自由研究なんて、そんなもんでしょ。
・・・それにしてもあの生き物、この暑いのによく寝るわねぇ・・・」

こあみ「zzz」

こあみは虫かごから出されたものの、食事の匂いにも反応せずに眠りこけている。

少女「・・・・」

一方の少女は、おもちゃを滅茶苦茶にされたことで、ご機嫌斜めのようだ。
黙っておかずを食べ続けている。


さらに数時間後、深夜。

こあみ「・・・・・と・・・・か?」

こあみはようやく目覚めた。
虫かごには入れられず、ソファーの上で寝かされていた。

こあみ「とかっ^^」

しめしめ。
今のうちにたっぷりイタズラをしてやろう。

こあみ「とかっ、とかっ、とかっ」カキカキカキ

・・・数分後には、寝ている皆の寝顔に落書きをしていた。
隠し持っていたマジックペンで。

こあみ「とか~♪」

こあみ「とーか、とーか」テクテク

しかし、こんなもんでは満足できんと、皆の寝室を出るとリビングに向かう。
そして、漫画、雑誌、本棚、洋服ダンス、テーブル、椅子、パソコンのモニター、テレビ、カーテン、壁・・・。いたるところにマジックで落書きを始めた。

こあみ「とか♪とか♪」

お次は台所。
今度はお皿にでも落書きをしてやろうと、こあみは食器棚を開けた。

その時。

こあみ「・・・と、か?」

開けた拍子に、食器が雪崩を打って落ちてきたのだ。
それに巻き込まれるこあみ。

こあみ「と、とかああ!!」

ガッシャーーーーーン!!!!!パリーーーン!!!!

こあみ「と゛が゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!」

こあみは床に叩きつけられ、全身に割れた食器の破片が突き刺さっていた。


すると、その音を聞きつけ、家じゅうの人間が一斉に目覚める。

父親「・・・・ん、なんだ・・・・?」

母親「・・・・うるさいわね、夜中に何なのよ・・・・」

少年「・・・・ん~、むにゃむにゃ、もう食べれ・・・・って、夢かぁ・・・・」

少女「・・・・あれ?」

全員が寝室を出て、リビングへ向かう。

一同「――――――。」

唖然とした。
落書きだらけのお互いの顔に。
ところどころ落書きだらけの部屋の様子に。

少年「お、お母さん、、何その顔・・・。」プークスクス

母親「やかましい!アンタだってピエロみたいじゃない!!
・・・・それにしても何なのよ、机もテーブルもあちこち落書きだらけ・・・・」

父親「こりゃ全部油性マジックで描いてやがる!くそ、簡単には消えないな・・・・。ドロボーでも入ったか?
・・・・いや、金も通帳も無事みたいだし・・・・。何だってんだ・・・・」

少女「――――ちょっとお母さん!台所、食器が割れてる!!」

皆で台所に向かう。
少女の言った通り、割れた食器が床に散乱していた。

そして、皆で割れた食器の破片をひとつひとつ片付けていくと・・・・

こあみ「・・・・・と・・・・か・・・」ピクピク

父親「―――?!」

全身に食器の破片が突き刺さり、血だらけのこあみが横たわっていたのだ。

母親「・・・・え?なんでこの子がここにいるのよ・・・・」

少年「あ!コイツ、手にペン持ってる!!」

そう、こあみは血だらけの右手に、油性マジックを握りしめていたのだ。

父親「ってことは・・・・リビングの落書きもコイツの仕業か・・・・?」

少女「・・・・だから言ったじゃない!この子がおにんぎょうさんにイタズラしたんだって!!」

母親「アンタのおもちゃはどうだっていいのよ!・・・・とにかく、この子がやったってことは・・・・」

父親「・・・・ゆうた。お前、明日コイツを捨ててこい、いいな?」

少年「え?!でも自由研究・・・・」

父親「んなもんどうだっていい!コイツのせいで明日は家族全員で大掃除しなきゃいけないんだぞ!!
いいか、絶対に捨ててこい、分かったな?!」

少年「・・・・はい・・・・」


翌日の昼。

少年「行ってきまーす・・・・」

少年は、遊びに行くついでに、こあみを捨てに行かされた。

こあみ「・・・と・・・、・・・か・・・、・・・と、か・・・」

虫かごに放り込まれたこあみ。
体に突き刺さった破片こそ取り除かれていたが、それ以外にはろくな手当てを受けていなかった。

少年「くそ・・・・!」

少年は歯ぎしりしていた。
昨日こそなんで捨てなきゃいけないんだ、と困惑していたが、朝になると。
お気に入りのマンガは表紙どころか、中身にまで落書きをされ、お気に入りのバットやグローブ、ボールもカラフルな模様だらけになっていた。

ただで捨てるわけにはいかない。

少年はいつも行っている少年野球のグラウンドに着いた。
人は誰もいないが。

こあみ「・・・と、か・・・?」

少年「・・・お前、ボールになれよ。そんな丸っこい体してるんなら」

そして、グローブをはめ、ピッチャーのフォームをとると・・・・

少年「そりゃあ!!」ブンッ

こあみ「とかああああああ!!!」

ゴッチーン

こあみ「と゛か゛ぁ゛!!」

見事壁に激突。
こあみの頭に大きなたんこぶができた。

少年「よーし、それじゃもう一回!」

こあみ「と、か!とか!!><」ブンブン

少年「・・・・そりゃ!」ブン

こあみ「と゛か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!」ゴッチーン


夕方。

こあみ「・・・・・と゛か゛」

頭はたんこぶ、体には擦り傷、青あざと悲惨な状態のこあみが、あの野球場に打ち捨てられていた。
投げられる以外にも、バットでホームランやら送りバントの練習に使われ、三時間ほどしてようやく解放されたのだった。

こあみ「と゛か゛、と゛か゛;;」

しかし、右腕は脱臼、両足は骨折。
そう簡単に動くことなどできるはずもない。

―――ここで野垂れ死ぬのが、どうやらこあみの運命らしかった。

その時である。

チィー!チィー!!

こあみ「・・・と゛、か゛・・・?」

タッダッタッ

こまみ「ちー!ちーー!!」

こまみだ。
こちらも全身すり傷と青あざだらけではあったが、それでもこあみよりはマシであった。


公園で妹を見捨て、自分一人で逃げ出したこまみ。
一時間ほど町をさまよい、偶然プロデューサーに再会できたのだ。

しかし。

P(なんだお前、戻ってくるんじゃねぇよ・・・はぁ?こあみとはぐれた?)

こまみ(ちぃー!ちぃぃぃ!!;;)

一緒にこあみを探してと懇願するこまみ。

P(知ったこっちゃねぇ、姉貴なら自分で何とか探しな。
・・・・言っとくが、もうお前は765プロのペットじゃねぇ。
お前は捨てられたんだよ。二度と俺たちには近づくなよ)

こまみ(ちぃぃぃぃぃ!!!)グイグイ

P(しつっけーなぁ、もう)グイ ブンッ

こまみ(ち、ちぃぃぃぃぃぃぃぃ?!)

・・・・バッシャーーン

そして、そばの用水路に放り投げられ、二時間ほど浮きつ溺れつを繰り返し、何とか生還。
泳ぎまくって空腹だったこまみは、たまたま近くのレストランを見つけ、裏口のゴミ捨て場を漁ろうとした。
しかし・・・

野良犬(ガルルルル・・・)

こまみ(ちぃぃぃ?!)

野良犬に襲われたのである。

野良犬(ワン!ワン!!!)ガブッ

こまみ(ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!)

逃げようとした瞬間、左腕を噛まれたのだ。

こまみ(ち゛ぃ゛ぃ゛、ち゛ぃ゛ぃ゛!!)ザシュッ

野良犬(キャイン!)

それでも右手で犬の鼻を引っ掻き、命からがら逃げられたのだ。

―――そして、妹の匂いをたどりつつ、さまよい歩き、ここでようやく再会できたというわけだ。

こまみ「ちー!ちー!!」

妹に駆け寄るこまみ。


すると。

こあみ「と゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!!!!!!!!!!」ガブリ

こまみ「ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛?!!」

―――こともあろうに、姉の腕に噛みついたのである。

こあみはもはや、こまみを姉などとは思っていなかった。
あの時コイツが、自分を置いて逃げなければ、あの家族に連れていかれて、こんな酷い目に遭わずに済んだのだ・・・
―――コイツさえ!

利き腕も両足も使えないが、懸命にこまみの腕を噛むこあみ。
しかし、こまみの側も妹の狂気に気付いたのか、

こまみ「ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」グボッ

こあみ「と゛き゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

こあみの腹に、左腕で渾身のパンチを食らわせる。

こまみ「ち゛ぃ゛、ち゛ぃ゛、ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」グボッ ドガッ バキッ

連続でパンチとキックを放つ。
しかし、こあみの噛む力は少しも緩まず。

こあみ「と゛ぉ゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!」ガブッ・・・ グチャ プシャアアアアア

こまみ「ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛」

ついに、こまみの右腕が千切れ、勢いよく鮮血が噴き出す。
もはや醜い姉妹ゲンカ、というレベルを超えていた。

こまみ「ち゛・・・!・・・・・ぃ゛・・・・・・」ドサッ バシャバシャ

とうとうこまみは抵抗を止め、地面に倒れた。
出血はおさまるどころか、却って酷くなり、こまみの千切れた右腕からは、スプリンクラーのように、あふれた血が地面にまき散らされていた。

こまみ「ち゛ぃ゛・・・・ち゛ぃ゛・・・・」ヒューヒュー バシャバシャ・・・

こあみ「・・・」

姉の無残な姿を、ただただ見つめるこあみ。
その表情には、姉妹としての情も、生物としての憐れみも感じ取れない。
ただ、獣同士の生存競争に勝った、とでもいう勝ち誇った薄笑いが浮かんでいた。

そのとき空には暗雲が立ち込め、ぽつりぽつりと雨が降り出す。

こまみ「・・・・・ち゛・・・・・ぃ゛・・・・・」

こまみはこあみに向けて、懇願するような表情で、左腕を伸ばした。
私が悪かったから、お願い、助けて。

こあみ「・・・とかっ!」バキッ

こまみ「・・・・・!・・・・・;;・・・・・ち゛ぃ゛・・・・・;;」

しかし、こあみは無残にも、降伏宣告をし、かつての妹に助けを求めたこまみの左腕を蹴り飛ばす。 骨が折れていたから、さほど力は入っていなかったが。
と同時に、だんだんと雨脚が強まり、どしゃ降りになってきた。

ピカッ!!・・・・ゴロゴロゴロ・・・・

さらに空には稲妻が走る。
これはマズいと、こあみは残った体力を振り絞り、ダッシュで近くの木の下へ逃げようとした。
姉を置き去りにして。

こあみ「とか、とか、とかっ」ピョーーン ピョーーン

両足を骨折していたにもかかわらず、なんとピョンピョンと蛙のようにジャンプしながら移動するこあみ。
さほど難なく大きな木の下へと辿り着く。
しばらくこあみは、木の下で身を潜めながら、雷が収まるのを待とうとする。

こまみ「・・・・・;;」

一方のこまみは、びしょ濡れになりながら、絶望した表情で、ガタガタと体を震わせている。

そして。

ピカッ!!
・・・・バリバリバリバリ!!

こまみ「ち゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛」

こまみに雷が直撃する。
髪と服に一瞬火が点いたが、これはどしゃ降りのためにすぐに消えた。
だが、今度こそピクリとも動かなくなった。

こまみ「」


こあみ「とか、とか^^」クスクスクス

こあみの笑みが一層大きくなる。
ざまあみろ、これで見捨てられた私の気持ちが分かったでしょ。
せいぜい地獄で反省すればいいんだ。
そんな感じの笑いだった。

だが、こあみは知らなかった。
雷から逃げる際は、木の下に逃げては、絶対にダメだということを―――

ピカッ!!
・・・・バリバリバリバリ!!

こあみ「と゛き゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

こあみの逃げた木に雷が命中。
そして、その下にいたこあみも、雷を喰らった。

こあみ「」

そして、こあみも、動かなくなった―――


ニュース「ニュースです。低気圧の移動に伴い、今日も関東地方では大荒れの天気が続き、東京でも非常に激しい雨と落雷が相次ぎました。
大田区の公園でも、野球用のフィールドのそばに雷が落ち、木が倒れる被害がありました。
なお、この被害現場では、ハムスターと同じくらいの大きさの小動物二匹の死体が発見されています。
落雷による死亡ということです―――」

プチン

夜の765プロ。
一人で残業しつつテレビを見ていたプロデューサーは、そのニュースを見てテレビを消した。

彼には分かっていた。
この小動物が何なのか。

P(最後は再会できたってワケか。
姉妹仲良く、雷に打たれて死ねて、本望だろうな―――)

彼はほくそ笑む。


―――実際は、死ぬに至るまで、凄まじい獣同士の、弱肉強食の争いが起こっていたことも知らずに・・・。


みなしごぷっち~こあみとこまみの場合~ 終わり

  • 最終更新:2014-02-20 16:25:35

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード