みなしごぷっち~ちひゃーの場合~

765プロ。
いたずら小僧のこあみ、こまみが去って、一週間。
事務所の皆は、そのことには何の反応も示さなかった。
自宅でぷちを飼っている者を除き、ぷちに関してはどうでもいい、と思うようになったから。


P「ふぅ・・・」

昼休み。
コーヒーを飲みながら一息ついていたプロデューサー。

小鳥「・・・あ、そういえば、今日もやよちゃん来てないですね」

P「そういえば・・・病気か何かですかね」

Pは内心苦笑していた。
理由はすでに、貴音から聞いていたから。


やよは三日前から、貴音の家に引きこもってずっと出ない状態だという。
あふぅにこあみ、こまみといじめっ子が去り、事務所でものびのび過ごせるはずなのに。
貴音は「面妖な・・・」とただ嘆息するしかなかった。

だが、やよが引きこもりになった理由を、プロデューサーは知っている。
こあみとこまみが去った翌日、彼がコンビニに行こうとして財布をごそごそやっていると、お金を落としてしまった。
次の瞬間、やよがダッシュでこちらに向かってきた。

やよ「うっうーー!!」

その時。

グボッ

やよ「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!!!!!」

―――プロデューサーの蹴りが、やよの腹に入った。

やよ「・・・うぅ~・・・;;」シクシク

おいおいと泣きだすやよ。
拾ってあげようとしただけなのに・・・痛いよー・・・。

すると、プロデューサーはやよの髪を掴んで持ち上げ、自分の顔をやよに近付け、睨みつける。

P「・・・おい。
お前も、他の連中と一緒に、事務所から捨てられたいのか?え?」

やよ「・・・うぅ?!」

P「うぅ?!じゃねぇよ。
うるさい奴らが消えてこれで落ち着いたと思ったのに、お前がこうじゃなあ・・・。
ちょっと考えないとなぁ・・・」

やよ「うぅ!!うっうーーー!!!!><」

P「・・・・あ?嫌だぁ?
俺たちはお前を飼ってやってんだ、お前につべこべ言う権利なんざねえ。
何なら貴音に吹き込んで、あいつの家にも戻れないようにしてやる。
・・・・分かったら、二度とネコババなんざすんなよ」

やよ「・・・う・・・;;」ガタガタ

やよはその日、貴音が戻るまでずっと部屋の隅で震えていた。


―――というわけで、今や事務所には静寂が訪れ、皆が落ち着いて仕事ができるようになった。

P「さて、と」

昼休みもじき終わるので、仕事の支度をしようか。

その時、事務所のドアが開く。

千早「・・・・すいません、遅くなりました・・・・」

P「・・・・おう」

入ってきたのは千早。
少しやつれて、目は真っ赤であった。

こうなった理由は明白。
―――ちひゃーのせいだ。

もともとは美希が拾ってきたちひゃーは、なぜか千早に懐き、基本は彼女の家、時々事務所で過ごしている。
ただ、懐くと言っても、それはぷち基準。
長い髪の毛を人にブラッシングさせたり。
お腹が空いたりすると、頭に上ってペシペシと叩き。
好物の牛乳を一日に何本も飲み、その度にお腹を壊して下の始末をさせる。
寝るとき顔に覆いかぶさってきて、千早を窒息寸前にまで追い込む。
へたくそな歌を何時間も歌い続ける・・・・

しかも、こうした習性が、親友のゆきぽがいなくなってから、ますますひどくなってきていた。
それこそ歌を一日24時間ぶっ通しで歌うことも増えた。
当然千早は寝不足、近所からの苦情も増える。

千早「・・・ねぇちひゃー、そろそろ寝る時間よ・・・」

ちひゃー「く♪く♪く♪くぅ~♪」

千早「・・・・・・。
・・・・もう、いい加減にして!!
こんな時間に大声で歌ってたら、近所迷惑でしょ!!!!」

ちひゃー「くぅ~♪くくっ♪くぅ~んにゃ♪」

千早「・・・ちひゃー!!
マイクは取り上げるわよ!!!!」バッ

ちひゃー「くっ!?シャー!!シャー!!!!」ガブッ

千早「・・・痛ッ・・・!!」

―――毎日がこんな調子であった。

勿論事務所にいるときも、ちひゃーのこんな振る舞いは日常茶飯事。
今まではあふぅやいお、ゆきぽにこあみこまみの方が手がかかっていたから、たいていの連中はあまりちひゃーを気にしなかった、ただそれだけのこと。
たださすがに我慢できず、ここ最近は千早に家に置いていくよう言いつけてあった。

P「・・・なあ千早、話がある」

千早「・・・ちひゃーのことですか?」

P「もうこのままじゃ、お前はアイドルとしてはやっていけなくなる。
そうなる前に、ちひゃーを処分しよう。
もうお前も、ちひゃーを可愛がる気にはなれないだろ?」

千早「・・・はい」

P「・・・それじゃ、明日ちひゃーを持ってきてくれ」


翌日。
千早はちひゃーを檻に入れて、事務所へ持ってきた。

ちひゃー「く♪く♪く♪くぅ~♪」

当のちひゃーは、最初こそ抵抗したらしいが、今は呑気に中でへたっぴな歌を歌っている。

千早「それじゃプロデューサー、よろしくお願いします・・・」

P「・・・ああ、今日と明日はゆっくり休め」

そしてプロデューサーにちひゃーを渡すと、千早は事務所を後にした。

P「さてと・・・・」

ちひゃー「くっ!くっ!!」ペシペシペシ

ちひゃーは檻から出されると、プロデューサーの頭に乗って叩き始めた。

P「・・・・ご飯か?
ちょっと待ってろよ」

彼は冷蔵庫から牛乳、そして自分の机から菓子パンを取り出した。
いずれもちひゃーの好物である。

P「ほれ、食いな」

ちひゃー「くぅ♪」ムシャムシャ ゴクゴク

数分後には、ちひゃーは両方とも平らげていた。

ちひゃー「くっ、くー」

P「ん?今度はブラッシングか?・・・オーケー」

食事を終えると、ちひゃーは髪のブラッシングをねだる。
冬ほどではないにせよ、ちひゃーの髪の毛はすごい量なので、ブラッシングは大変だ。

さらに数分後。

P「ほーれ、終わったぞちひゃー・・・」

ちひゃー「くぅ・・・にゃぁ・・・zzz」

―――食事に混ぜた睡眠薬が効きだしたようだ。
プロデューサーは行動を開始する。


しばらくして、新宿駅南口。

P(ここでいいかな・・・)

さすがにもう遠方へはいけないので、いおやこあみこまみと同様、都内で捨てることになった。
ちなみにここを選んだのは、路上ライブをやっている若者が多いからだ。
下手の横好き、とはいえ、歌の大好きなちひゃーもここでならお仲間に入れてもらえるだろう、とプロデューサーは思った。

適当な場所にちひゃーを置き、ハンカチを毛布代わりに掛けてやる。
さらに、こっそりがまぐちに万札を一枚入れてやった。
空き缶も添えて。

P「じゃあなちひゃー・・・お別れだ」

そして足早に歩き去る。
当のちひゃーは・・・

ちひゃー「くぅ・・・zzz」

まだ眠りこけていた。


―――自分の好きなことだけで食べていくことが、どれほど大変なことかも知らずに。


数時間後。

ちひゃー「・・・く・・・ぅ・・・」

ちひゃーは目覚める。体を覆うハンカチがはだけた。
すると、真正面に駅のような建物があることに気付く。
そして、自分は歩道に寝かされているのだとも。
すでに夜になり、周囲は会社帰りのサラリーマンや若者たちが大勢行き来している。

ちひゃー「・・・くぅ?」

困惑するのも無理はない。
事務所に着くと千早からプロデューサーに預けられ、彼から食事を貰った後は・・・・
覚えていない。

ちひゃー「くっ!くーーっ!!」

ちひゃーはプロデューサーを呼ぶ。
しかし声に反応するのは、赤の他人ばかりであった。

通行人A「・・・・なんだ、これ?人形か?」

通行人B「・・・・喋ってますよ、ペットロボットですかね?」

通行人C「・・・・いや、これ、ロボットじゃねえ。
触った感触が人肌とおんなじだ」サワサワ

ちひゃー「くくぅーー?!」

ザワザワザワ

次第に人が大勢ちひゃーを散り囲む。

ちひゃー「・・・くぅ♪」

最初こそ困惑していたちひゃーだが、次第に表情が得意げな笑顔に変わっていく。
なぜか知らないが、今や自分の回りを大勢人が取り囲んでいる。
いつの間にか、こんなに注目されちゃって・・・えへへ。

ちひゃー「くっ!」ササッ

ちひゃーはポケットからマイクを取り出した。

通行人たち「・・・・?」

茫然とする人々を前に、ちひゃーは得意の演歌を歌い始める。

ちひゃー「く♪く♪く♪くぅ~♪」

通行人D「・・・歌?」

通行人E「・・・なんか曲調は演歌みてーだな・・・よく分かんねーけど・・・」

少しざわつき始めた通行人たち。
しかしちひゃーは微塵も気にせず、

ちひゃー「く♪く♪く♪くぅぅぅ♪
くぅ~♪くくっ♪くぅ~んにゃ♪」

そしてご自慢の演歌を歌い切った。

※ちひゃー 演歌 http://youtu.be/Gs7enDYWeLo
         http://youtu.be/QfS0ZBhHABY

ちひゃー「・・・くっ!」フンス

通行人A「・・・終わった、のかな?」

通行人B「みたいですね・・・」


すると、

通行人たち「「「「「「パチパチパチ」」」」」」

何人かから拍手が。
控えめなものではあったが・・・

ちひゃー「・・・くっ?くぅ~♪」

すっかり得意げのちひゃー。
すると、脇に置いてあった空き缶を皆の前に置く。

通行人D「・・・お金を払えってこと?」

通行人E「まぁ・・・十円くらいならいいか」

そして、通行人の何人かがお金を入れてくれた。

チャリンチャリーン

ちひゃー「くっ!く~ぅ♪」

それを見て、ますます得意げなちひゃー。
自分が捨てられたことなど、全く頭にないようだ。


十分後。

ちひゃー「くっ・・・くぅー?」

ちひゃーは空き缶の中身を見て驚く。
中に入っていたのは・・・たった四十三円だった。

ちひゃー「・・・くっ・・・」ショボン

うなだれるちひゃー。
これじゃ、缶ジュース一本だって買えないよ・・・。

もう一度歌ってみようとするが、すでに行きかう人はだんだん少なくなっている。
ちひゃーを見る人などいなくなっていた。

ちひゃー「くぅ・・・」

それにしても、自分は何でこんなところにいるんだろう?
夢か・・・違う。
確かに今自分はマイクを握っていて、さっきまで歌っていた。それは確かなのだ。
服を着ていて、首にはがまぐちが・・・

・・・がまぐち?

ちひゃー「くぅ、くっくっ」

急いでがまぐちを漁ってみる。すると・・・

一万円。

やった!

大喜びのちひゃー。
朝までずっとカラッポだったのに。
きっと神様が恵んでくれたんだ!

ちひゃー「くっく、くー♪」トテトテ

ちひゃーは夜の新宿を走り出す。


しばらくして。
ちひゃーはよくあるファストフード店の前へ着いた。
・・・すぶわい?
なんだろう?
でも、中で食事してる人がいるし・・・

少しは字の読めるちひゃーにも、アルファベットの意味を理解するのはできないようだ。

ちひゃー「くっ」トテトテ

ウィーン イラッシャイマセー

構わずちひゃーは入店する。

店員「いらっしゃいませ・・・え?」

ちひゃー「くっ!くっ!!」

カウンター前。
見たこともない生き物が近寄ってきて、店員は困惑している。

ちひゃーはそれに構わず、カウンターへよじ登ると、メニューを店員に指し示そうとした。

ちひゃー「くっくー、くー・・・くぅ?」

店員「・・・あ、店長、ちょっといいですか・・・」ドタバタ

このローストチキンのサンドイッチと、アイスミルクをくださ・・・
・・・あれ?どこに行くの、店員さん?

店長「ん、なんだ、なにがあった・・・」

店員「・・・あの、なんか動物が入ってきて・・・」

中年男性とさっきの店員が、店の奥から出てきて、カウンターにちょこんとしゃがむちひゃーを見つめる。

店長「なんだこりゃ・・・こんな動物、見たこともないぞ・・・」

店員「どうしましょう・・・」

もっとも、困惑しているのはちひゃーも同じ。
なんで売ってくれないんだろう?

ちひゃー「くっくー、くぅ、くっ」ユビサシ

店長「・・・ん?・・・ローストチキン入りサンドイッチとアイスミルクが欲しい、ってことか・・・?」

ちひゃー「くっ!」

そしてちひゃーは、がまぐちから万札を取り出し、店長に見せる。

店長「金は持ってる、と・・・
よし、取りあえずローストチキンのフットロング、アイスミルクのLサイズのセット一つだ」

店員「え、売るんですか?」

店長「当たり前だ、とりあえず金は払ってくれるみたいだしな。
食わせてやったら、警察に電話だ」

店員「はぁ」


しばらくして、ちひゃーの頼んだメニューが出来上がる。

店長「ハイ、それじゃローストチキンとアイスミルクのセット、1040円ね」

ちひゃー「くぅ」

店長「ハイ、おつりが8960円・・・ありがとうございました」

ちひゃー「くっくー♪」

ちひゃーはサンドイッチとミルクの入ったトレーを持ち上げ、近くのテーブルに移動する。

ちひゃー「く♪く♪く♪くぅぅぅ♪」モグモグ

ちひゃーは夢中でサンドイッチを頬張る。
なかなかおいしい。
時々、周りの客が何事かとじろじろちひゃーを見つめるが、当の本人は気にしていなかった。


十五分ほどして。

ちひゃー「くぅぅ♪」ゲップ

ミルクもサンドイッチもすべて食べ終わったちひゃー。大満足そうだ。

すると。

警官A「すいません、新宿警察署の者ですが・・・」

警官が二人、入り口から入ってくる。

店長「ああすみません・・・その、あそこの動物が、ちょっと前に店に入ってきまして・・・」

ちひゃー「くぅぅ?」

警官が目を丸くしてちひゃーを見つめる。

警官B「・・・?こりゃ、見たこともない・・・」

店長「それで、金はもっていたみたいで、うちのサンドイッチを一つ売って出したんです」

警官A「・・・はぁ、ということは、この子はペットということですか。
分かりました、一時的にうちの署で保護します」

店長「よろしくお願いします」

警官B「・・・さ、君、私らと一緒に来てくれ」

警官の一人が、テーブルに座るちひゃーを持ち上げると、檻の中に入れようとする。

ちひゃー「くぅ?!しゃーーーー!!!」

何をするの!
お金は払ったじゃない!!
そう抵抗するちひゃーだが、あっさりと檻へ入れられた。

警官A「それじゃ、失礼します」

店長「ありがとうございました」

そして、二人は入り口のパトカーへ向かう。
一人が後部ドアを開け、檻は後部座席へ置かれた。

ちひゃー「くぅ・・・くぅぅ;;」

ちひゃーは抵抗を止めると、檻にしがみついて泣いていた。
なんでこんな目に・・・

警官A「泣いてやがる・・・よっぽど飼い主が恋しいのかな」

警官B「・・・いやそもそも、こんな変な生き物がいたことに驚きですよ」

警官A「それは言うな・・・とりあえず、行くぞ」

そしてパトカーは動き出す。


数分ほどで、警察署に到着。

警官C「・・・で、これが迷子のペットだと・・・」

警官A「はい。とりあえず服を着ていて、財布をぶら下げているってことは・・・ペットだとみて間違いないかと」

警官C「・・・しかし、この子の飼い主とやらは、いったいどこでこの子を見つけたんだ?」

首をひねる警官たち。

警官B「とりあえず、保健所の方へ連絡しましょうか。
そちらにも飼い主が連絡してるかも・・・」

ちひゃー「くぅぅ?!」

―――ちひゃーもまた、保健所という言葉に反応した。
もしそこへ送られたら、飼い主のいないペットとして、自分は殺されてしまうのかな・・・
そんなのいやだ!

ちひゃー「くっ、くぅ~!><」

警官A「ん、どうした?
心配ない、君の飼い主を探すだけだからね」

優しくちひゃーに話す警官。

ちひゃー「くぅ・・・」

しかし不安はぬぐえないようだ。

警官C「それじゃ、この子の捜索願が出されてないか、至急当たってみてくれ。
保健所にも動物管理センターにも連絡だ」

警官B「分かりました・・・
ところで、この子はどこに置いておきます?」

警官C「そうだな、とりあえずは留置場に置いておくしかないな・・・
あ、いいところに来た、おーい片桐君!」

年配の警官が、たまたま廊下を歩いてきた女性警官を呼ぶ。

警官D「あ、警部、どうしたんですか?」

警官C「あ、うちの署で迷子のペットをしばらく預かることになってな・・・。
それで、留置場に住まわせるから、気味が面倒見てやってくれないか?」

警官D「え~?!うちの署、ここんとこ大勢容疑者ブチ込んでるせいで、人手足りないんですよ?!
痴漢ヤローに下着ドロに裏ビデオ所持、鬼畜変態ヤローばっかりで、たかがペットの世話ごときで目を離すわけにはいかないじゃないですか!!」

警官C「ま、まぁ、適当に餌やったりする程度でいいから、な?」

警官D「・・・・ちぇ~・・・。」

警官B「まぁ、早苗さん、今後しばらくは飲みに行くとき、俺おごりますから、ね?」

警官D「なぬっ?!よーーーしアンタ、その言葉忘れるんじゃないわよ!!!
そうと決まれば今夜は飲み明かすわーーー!!!!!!」

警官C「・・・オホン、この子の世話を忘れんでくれよ?!」

警官D「はいはい・・・にしても、見たことないペットねぇ・・・・」

ちひゃー「くぅー!!しゃーーーーー!!!」

ちなみにちひゃーは、「ばいんばいん」な女性を嫌う。
この警官も例外ではないようだ。

警官D「ホラ、暴れるんじゃないの!
寝床に行くわよ!!」

ちひゃー「くっ、くぅ~!!くーーー!!!><」


数分後。

警官D「ほーら、ここがアンタの仮住まいよ」

ちひゃー「くぅぅ」

警官は留置場の一つに、ちひゃーを置く。

警官D「えーと、毛布はそこのベンチに置いてあるから、そこで寝てよね。
あ、そうだ、何か食べたいものとかある?」

ちひゃー「くくぅ」ユビサシ

ちひゃーは警官の左手に持っている牛乳の紙パックを指さした。

警官D「ん、牛乳がいいの?
分かった、自販機で買ってくるから、そこで待ってなさい」

ちひゃー「くっ」

警官D「はい、そんじゃリクエストの牛乳よ。
とりあえず、三本買ってきたから・・・あと付け合わせのアンパンね。
それじゃ、おやすみなさい」

ちひゃー「くぅ」

警官D「よーーし、それじゃ引継ぎして、飲み会といきますかぁ!!!」

警官は留置場を出ていく。


ちひゃー「くーっくくー♪くっくくっくー♪」モグモグ ムシャムシャ

ちひゃーは嬉しそうにアンパンを食らう。
サンドイッチとミルクを食べてまだそれほど経ってないのに、大した食欲である。

ちひゃー「くっくっくっくくっくくー♪」ゴキュゴキュゴキュ

そして牛乳も三本、全部飲み干してしまった。
満腹になったちひゃーは、さっそくベンチによじ登る。

ちひゃー「くぅ・・・く・・・zzz」

そして眠りに就こうとした。


ギュルギュルギュル

ちひゃー「・・・・くぅぅ?!」

ちひゃーは飛び起きた。
突然の腹痛、お腹の音に。

ちひゃー「くぅ!くぅぅぅ!!」ジタバタ

ちなみにちひゃーは、自分で排泄することができない。
プロデューサーか千早にオムツを着せてもらうか、あるいはおまるに誘導してもらわないとできないのだ。

ちひゃー「くぅ!!くぅぅぅぅぅ~~~!!!!><」

このままじゃ漏らしちゃうよ!
誰か来てーーー!!



・・・プゥゥ
ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリ~~ーッ

ちひゃー「・・・く・・・ぅぅ・・・・」

―――そして、限界が訪れた。
茶色の液体が、ちひゃーのシャツとズボン、コートを汚していく。

しかしそれでも下痢はおさまらず、床にも広がっていった。
辺りに凄まじい悪臭が広がる。

ちひゃー「くぅぅぅぅぅ;;」

服と床が自らの糞尿で汚れていくのを見ながら、ちひゃーはおいおいと泣きだした。


翌朝

警官D「ぷはーーーっ!
昨日は飲んだ、飲んだーーー!!っとぉ・・・・・・」

警官B「早苗さん、飲み過ぎなんですよ、全く・・・・・」

留置場に入った二人は、思わず鼻をつまむ。
辺り一面に、物凄い悪臭が立ち込めていたから。

収監者「ちょっと、ちょっと!お巡りさ~ん!!
何とかしてくれよーー!!」

警官D「やかましい!大人しくしてなさい!!
・・・・しかし何なのよ、これ・・・・」

警官B「なんかまるで、畜舎みたいですね・・・
豚のフンみたいな・・・・」

・・・・フン?

二人は奥の方へ走る。
確か、あの生き物がいるはずの―――

警官D「・・・・・・あちゃー・・・・・・」

警官B「・・・・・なんじゃ、これは・・・・・」

二人が見たのは、その部屋の床一面に広がる茶色の液体。
そして、その中心でしゃがみこんでしくしくと泣いているちひゃーであった。

ちひゃー「くぅぅ;;」シクシク

警官D「・・・赤羽根君!!
水、バケツ、デッキブラシ、檻、大至急!!!」

警官B「は、はい!!」

男性警官が走り出す。

警官D「・・・・はぁ・・・・
朝からウンチの始末なんて・・・・引き受けるんじゃなかった・・・・」

ちひゃー「くくぅー・・・?;;」


そして、約一時間後。

警官B「ぷはぁ・・・・」

警官D「やっと、終わったわ・・・・」

必死で床を掃除し、消臭剤を撒き、シャワー室でちひゃーの体を洗い、服を洗濯し、暴れるちひゃーをペット用の檻に入れ・・・・。
二人はクタクタであった。

警官B「それじゃ俺、行きますね・・・」

警官D「お疲れ・・・・」

男性警官は去っていく。

警官D「それにしても、トイレトレーニングもしてないなんて・・・・
一体どんな飼い主なのよ!」

ちひゃー「くぅ・・・」

何度もちひゃーには、プロデューサーによって、一度に何本も牛乳を飲んだりしないこと、トイレに行きたくなったら必ず合図すること、用を足すときはおまるですること、などの躾を受けていた。
しかし、全く効果はなかった。
牛乳はあるだけその時に飲んでしまい、もよおしたらただ慌てて周囲をキョロキョロし、ジタバタするだけ。
そして結果的に間に合わず、床で漏らしてしまうのだった。

警官D「・・・・とりあえず、檻から出ていいわよ。
今度から、トイレをするときは、このバケツにしてちょうだい」

女性警官はちひゃーをペット用の檻からだし、留置場に戻すと、古いバケツをそっと置く。

警官D「いいわね?あんまり手間を掛けさせないでよ」

ちひゃー「くぅ」

そして牛乳とパンを置き、女性警官は去っていく。

ちひゃー「くぅぅ~♪」ムシャムシャ ゴクゴキュ


しかし、翌日――

警官D「・・・・・・・」

警官B「・・・・また、ですか・・・・」

収監者「お巡りさーーん!
また奥の方からヒデェ臭いがするんだけどーーーーー!!!!」

ちひゃー「くぅぅ~!!;;びえーーーー!!!!!;;」

やっぱり間に合わずに、下痢を漏らしてしまったちひゃーであった・・・・。


そして一週間後。

警官C「どうかね?例のペットの飼い主は見つかったか?」

警官A「ダメですね・・・捜索願も出されてないし、このあたりの保健所にも、そうしたペットが行方不明になった、という通報はないそうです」

それもそうだろう。
プロデューサーも千早も、ちひゃーの世話が手に負えずに、捨てることにしたのだから。

警官C「となると・・・もっと遠くから流れ着いてきたとか、それともそもそもペットではない、とか・・・」

警官A「それはないでしょうね・・・まず服に財布、あとマイクといった所持品がありますし。
遠くから流れてきたのであれば、あの店で見つかった時、もっとボロボロだったはずです」

警官C「・・・では、捨てられた、と・・・・」

警官A「・・・そういうことになりますね」

二人はため息をついた。
するとそこに、疲れ切った表情の女性警官が入ってくる。

警官C「ああ片桐君・・・大丈夫かね?」

警官D「大丈夫じゃ、ないですよ・・・・
・・・・ホントになんなんですか、あの動物は・・・・!」

ここ一週間、彼女は毎朝糞尿の片づけをさせられていた。
それに加え、ちひゃーは夜中に歌を歌いだす。
しかもだんだん声が大きくなっていくので、周りの収監者たちからは不平が出ていた。
迷子のペットだか何だか知らんが、アイツをどこかにやってくれ、騒音と悪臭なんてたまらん、と。

警官C「・・・となると・・・保健所で処分してもらうしかなさそうだな・・・」

警官A「・・・ええ」

警官D「・・・すぐそうしてください!
もうこれ以上、動物園の飼育員をやるのはうんざりですよ・・・!!」

警官C「・・・分かった」


警官B「・・・おーい、起きたまえ。
君の飼い主が見つかったぞ?」

ちひゃー「・・・・く・・・・ぅ・・・・?」

ちひゃーは昼寝から目覚める。
男性警官の一人が、檻を持って立っていた。

警官A「さ、支度をしなさい」

ちひゃー「くっくー」

そして檻へ入れられる。


警官C「絶対に、あの動物に感づかれるなよ?
保健所に着くまで、あくまでも家へ送ってやるふりをするんだ」

警官A「ええ、分かってます」

そして檻を後部座席に乗せ、パトカーが発進する。


そしてパトカーが発信して十五分後。

ちひゃー「くっくー、くぅぅ」

警官A「ハハハ、落ち着きなよ、じきに家に着くさ」

警官は優しくちひゃーをなだめる。

その時だ。

ちひゃー「・・・・くぅ?」

道路沿いのマンションを、自分の乗ったパトカーが通り過ぎていったのだ。
―――飼い主である、千早の住むマンションを。

警官A「ん、どうしたね?」

ちひゃー「くぅ!くっくー、くっ!!!」ユビサシ

あそこが私のお家だよ!早く停めて!!

警官A「・・・あのマンションが、どうかしたのかい?
あれは君のお家じゃないんだ」

ちひゃー「くぅぅぅぅ!!!!!」

ホントだってば!!


戻す気はない。どこかほかの場所へ連れていくんだ。
もしかして――保健所?!

ちひゃー「くぅぅぅぅぅ!!!!!!!!しゃーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」ドタバタバタ

警官B「ど、どうしたんです?!」

警官A「お前は運転に集中しろ、いいな?
・・・・ほら、落ち着きなさい、もうそろそろお家に着くからね」

檻の中で暴れるちひゃーを、何とか警官がなだめる。


そして、目的地に着いた。
保健所へ。

パトカーは駐車場に停車した。

警官A「・・・まだ暴れてるみたいだ、二人で持っていくぞ。
絶対落とすなよ?」

警官B「了解です」

そして後部座席からちひゃーの檻を降ろす。

ちひゃー「くぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!」

まだちひゃーは暴れている。
必死に鉄格子を蹴っていた。

警官A「ほら、もう君のお家だぞ・・・」

しかし、いくらぷちとはいえ、そんな嘘に騙されるほどちひゃーも馬鹿ではなかった。
目の前の白塗りの大きな建物は、とても住むための家には見えない。
明らかに保健所だ。

そして建物の中へと入る。

警官B「すみません、捨てられたペットの処分で来た者ですが・・・」

職員「あ、はい、じゃこちらへ・・・」

警官はそっと檻を床に下した。

ちひゃー「くぅぅぅ!!!!!!!」

警官A「・・・あの、鎮静剤などはこちらには・・・」

職員「分かりました、今持ってきます・・・・」

そして白衣を着た男性が去る。

いよいよまずい。
きっと殺される。
ちひゃーは感づいた。

蹴りでは開かないと分かったちひゃーは、檻に頭突きを加える。

ガッシーーーーーン!!

ちひゃー「く゛ぅ゛う゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」

警官B「・・・大丈夫ですかね?」

警官A「まさか、鉄製の檻だ、あれじゃ壊れはしないさ」

しかし、ちひゃーは必死で渾身の頭突きを繰り返す。
檻の扉を破るために。

ちひゃー「く゛に゛ゃ゛ぁ゛あ゛!!!!!!!!
く゛き゛ょ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!!!!!!!!!!」

ガンガンガン

ちひゃー「く゛こ゛ぉ゛う゛!!
く゛き゛ゅ゛ん゛!!!
く゛く゛っ゛!!!!く゛っ゛く゛っ゛、く゛っ゛ーーーーーー!!!!!く゛、く゛!??!!?
く゛、く゛、く゛・・・く゛ぅ゛く゛ぅ゛ぅ゛ーーーーーーー!!!!!!!
く゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛う゛う゛う゛~~~~~~~!!!!!!!!
く゛き゛ぃ゛、か゛っ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」

ガンガンガンガンガンガンガン・・・・・・


・・・・そして。

ガッシャーーーーン!!!

警官A・B「?!」

ちひゃー「・・・・・・。
・・・・・ぐっ、ぐひゃ、ぐぁ・・・・・」

檻の扉が破れる。
そして頭がボコボコに歪み、血だらけのちひゃーが檻から出てきた。

警官A「おい!逃げるぞ、急げ!!」

警官B「は、はい!!」

しかし、生にしがみつくちひゃーの底力はすさまじい。

ちひゃー「ぐぅう!! くぅ~!!!」ダッダッダッ

必死で駆け抜け、入り口を出る。
しかし警官も、このままでは追いついてしまう。

その時、ちひゃーは道路を見た。
車だ。
あれに飛び乗ろう!

ちひゃー「に゛ゃぁあああ!!」 トテテテ・・・・

ピョーイ!!

助走をつけ、歩道まで一直線に走る。
そして、ピックアップトラックに飛び乗った。

ちひゃー「くぎゅうううう・・・・・」

ひとまず脱出でき、ほっと一息つくちひゃー。

しかし・・・。
自分は今、あのがまぐちをあの警察署においたままであったことに気付いた。
そのうえ、宝物のマイク、そして服も。

ちひゃー「・・・・くぅぅ」

自分はこれから、どうすればいいんだろう・・・


・・・・数時間して。

ちひゃー「くぅ・・・・にゃ・・・・」

ちひゃーは目覚めた。
自分はまだ車の上。
すでに日は暮れ、夜になっている。

そしてどうやら、今は海辺を走っている。
潮風の匂い、波の音・・・

そうだ!!
ここは湘南。
たしか、千早といっしょに来たことがあった。
なつかしいなあ・・・・

しばらくして、車は駐車場に泊まる。
いけない!姿を隠さないと!
しかし、トラックには何も積んでおらず、身を隠せそうにはなかった。

バタン

「よっこらしょっと・・・・
・・・・おーい、ちひゃー、何してんだー?」


聞き覚えのある声。
―――プロデューサーだ。

ちひゃー「くぅぅ?!」

P「おい、何驚いてんだよ。
一緒に海へ行くか?」

茫然とするちひゃー。

P「・・・・なんでお前がここにいるんだって顔をしてるな?
なぜか?見張ってたからだよ。
お前が新宿駅でへったくそなライヴをご披露してたときも、サブウェイで飯を食ってた時も。
警察に連行された時も、な。
ちなみにお前の面倒を見てくれた婦警さん、ありゃ俺の学生時代の先輩でな?
お前が警察署でどんなことをしたのか、しっかり電話で聞いちゃったよ。散々怒られたがな。
で、お前はきっと保健所に連れていかれて、そこで暴れて、逃げ出すだろうから、前で張ってたんだ。
そしたら、お前、保健所から飛び出してきて、俺の車に飛び乗るんだからなぁ・・・・」

プロデューサーが笑い出す。

ちひゃー「くっ!くっ!!」

ちひゃーは怒り出す。
それなら、助けてくれても良かったじゃない!!

すると。

グボッ

ちひゃー「ぐぅっ!?」

プロデューサーの蹴りが、ちひゃーの腹に命中した。

P「・・・はぁ?
お前はな、捨てられたんだよ。
だから、見張ってたのは別に飼い主としての責任を果たすためでもねぇ。
ただ、俺の趣味ってやつさ」

ちひゃー「くぅぅ・・・;;
びえーーーーー!!びえーーーーーーーーー!!!!;;」

P「おいおい、泣くんじゃねぇよ・・・っと!」

グボッ ゴキッ

ちひゃー「くぎゅっ!?」

今度は蹴りが顔に・・・右目に命中した。
目がよく見えなくなる。

ちひゃー「くっ・・・ひゃぁ・・・・><」ゼーゼー

P「はっはっは、保健所から逃げ出した時の根性はどうした?
もうへばっちまったのか?
・・・それに、大泣きするのはまだ早い」

ちひゃー「・・・・?」

P「さっき、俺はお前を捨てたといった。これはまだ覚えてるな?」

ちひゃー「・・・くぅぅ・・・」

それが、いったい―――


P「―――俺が捨てたのは、お前だけじゃない。
ゆきぽも、あふぅも、いおも、こあみとこまみもだ」


ちひゃー「くぅぅぅ?!」

P「そうだ。
あふぅは俺の地元の九州のド田舎の山村に。
いおは東京都のごみ処分場に。
ゆきぽは石垣島のマングローブ林に。
こあみとこまみは、大森ふるさとの浜辺公園に、な」

ちひゃー「くぅぅぅーー?!」

P「なんでそんなことをした、ってか?
・・・・お前ら、ホントに反省とか後悔とかしないんだな。

思い返してみろ。
お前らは毎日のように事務所を荒らし、皆を傷つけていた。

たとえばあふぅなら、すぐ短気をおこして暴れまわって、おまえらとケンカ騒ぎを起こして、そのくせ疲れりゃ飯を食らってグースカ寝る。

いおはわがままし放題で、飯は人間様よりいいものをよこせと騒ぎ・・・あげくにビームを打ってものを壊し、俺たちにケガを負わせる。

ゆきぽはお前と一緒に下手な楽器を演奏するわ、あげく精神的におかしくなるとスコップでどこでも穴を掘りまくって・・・。

こあみとこまみは、毎日変なイタズラを俺たちにしては、イライラさせてくれたよ」

ちひゃー「・・・・・」

P「そしてお前。
音痴な歌を長時間歌って、それが真夜中でもお構いなし。
そして牛乳を死ぬほど飲んでは、それが原因で腹を下して、そしてその始末を俺たちにやらせる。
さらには人の頭に乗ってペシペシと叩くわ、髪のブラッシングをやらせるわ・・・・
これでもさっきの四人よりマシかと思うと、目まいがするぜ」

ちひゃー「・・・くぅぅ」

P「食って、寝て、遊べ・・・こんな恵まれた毎日を、お前らは俺たちのおかげで過ごせていたわけだ。
だがお前らは一向に感謝なんてしない。
もっとよこせ、まだ足りない!・・・こんな調子だ。
こんなんで、捨てられない方が不思議だよ、全く・・・」

ちひゃー「・・・くっく、くぅぅ」

P「・・・それは犬や猫も、他のペットも同じだろ、だと?

・・・・・・ふざけんじゃねぇ!!!
てめぇらは犬以下、猫以下、並のペット以下だってんだよ!!!!
犬や猫だって、ある程度しつけりゃ人間の言うことは聞く。
だがてめぇらはどうだ?!
俺たちがいくら叱ったりしたところで、俺たちの言うことを聞いたりしたか?!
違うよなぁ?!なぁ、おい!!!!!!」

グボッ!
ドガッ!!
バキイィッ!!!

ちひゃー「く゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!!」


プロデューサーは激高しながら、ちひゃーを蹴り続ける。

P「くそがああああああ!!!クズがぁあああああああ!!!!
てめぇなんざ、生まれてこなきゃよかったんだよ!!!!!
死ね!!!!!!!!!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!
くたばりやがれえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ボコッ ドガッ バキ ガッ

ちひゃー「・・・・・・。
・・・ぐっ、ぐひゃ、ぐぁ・・・」


そして五分ほど経ち。

ちひゃー「・・・・ぐ・・・・
・・・・ひゃ・・・・・・・

・・・・あ・・・・・」ヒュー ヒュー

完全に虫の息のちひゃーが、地面に横たわる。
体中血だらけ、あざだらけなのは勿論、左目が潰れてしまっていた。

P「・・・・まだ、生きてんのか・・・・」

さすがの生命力と、プロデューサーは唖然とする。

P「・・・そうだ。
お前、今から海に流してやるよ。
ゆきぽも今頃、沖縄の海に死体になって浮かんでるだろうしな。
お前も運が良けりゃ、ゆきぽに会えるかもよ?」

ちひゃー「・・・・・ぐ・・・・・」

プロデューサーはちひゃーの髪を掴む。

P「それじゃあ、な!」

ブン

・・・・バッシャーーーーーン

ちひゃーは海へと落ちた。
そしてだんだんと流されていく。

P「行っちまったか・・・・
まぁ、最後まで、みなしごとして生きて、そしてみなしごとしてくたばりゃいいさ」

そして彼は車に乗り、発車させると、その場を去って行った。


一方。

ちひゃー「・・・ぐ・・・;;
・・・ぐにゃあああ・・・・;;」

海に流されながら、泣いているちひゃー。
こんなところで、独りぼっちで死ぬなんて・・・・

・・・・嫌だ!

誰か!

誰か、助けて!!

死にたくない!!!こんなところで!!!!

たすけてーーーーーーー!!!!!

・・・・・た・・・・す・・・け・・


翌日の朝。

片瀬東浜海水浴場。

波打ち際に、なにか青い髪の人形みたいなものが浮かんでいる。

ちひゃー「」プカプカ

もちろん、ちひゃーだ。
その死に顔は、ひたすら絶望、そして虚無感しか感じられない。


これが、「ぷちどる」の最期の物語である。
彼らの生涯はと言えば、ただひたすら自分の思うままに生き、周囲のことも考えもせず。
そして死ぬ間際、罰として、人間たちから痛めつけられたり、あるいは初めて人間たちの手を離れて生きることとなり、その過酷さに耐えられず。
そして無残に命を散らしていった・・・・

最初、ぷちどるを飼っていたプロデューサーらは、ぷちを「食って、寝て、遊ぶ」だけしていれば生きていける、人間と比べ幸福な生き物だと言った。
最初にそんなぷちをパッと見た人々も同じ感想を持つかもしれない。


だが。

思い出してほしい。
あんな彼らの、人に寄生することでしか生きられない情けなさを。


―――そんな、みじめな生涯が、果たして人間と比べてどれほど幸福と言えるだろう・・・。


みなしごぷっち~ちひゃーの場合~ 終わり

  • 最終更新:2014-02-20 16:23:41

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