クロックタワー・ぷちどるハント2

――前回の続き

ハンティング・ゲームでただ一匹だけ生き残ったこまみ。
しかし生存を喜ぶ間もなく、次のゲームにも参加させられてしまいます。

こまみ「ぢーーーっ!! ぢーーーっ!!」

あふぅ「にゃの……ナノッ!」ウルサイッ

クウー、トカー、ウッウー

事の重大さを訴えるこまみでしたが、他のぷち達にはそもそも何のことなのかわかりません。
そうこうしているうちに、開始時間がやってきてしまいます。

「出ろ。楽しい遊びが待ってるぞ」

控室から時計塔内部へと放り出される五匹のぷち達。
さっきと同じだ。事情を知るこまみは恐怖します。

『ようこそ、ぷちどる諸君! 今から君達がすること、されることをお教えしよう!』

モニターのこの映像も、さっきと同じです。
間違いない。またあの恐ろしい殺し屋に追いかけられるんだ。こまみはたまらずに、一足早く駆け出しました。

こまみ「ちーっ!」グイッ

こあみ「と、とかぁ?」

こあみの手を引っぱり、無理矢理連れ出します。違う片割れ同士なのですが、関係ありません。
こまみにとっては、先ほど見殺しにしたこあみへの贖罪のつもりでした。

こまみ「ちぃ……ちぃ……」 こあみ「とかー……」

カンカンカンカン……
二匹でらせん階段を昇って行きます。逃げて隠れるしか道はないのです。
一方のこあみは、まだ状況が掴めていません。

こあみ「とか! とか!」ナンナノ

しかしほどなくして、下からぷち達の悲鳴が聞こえてきました。

あふぅ「ナノォォォォォオオ!?」 やよ「うっう~~!!」ζ*T0゚)ζ

ちひゃー「ぐぅぎゃぁあああああああああああ!!」

階段から覗いてみると、残っていた三匹が何者かに襲撃を受けていました。
あふぅとやよは逃げ出したものの、ちひゃーが魔の手にかかったようです。

殺人鬼「硫酸シャワーはどうだ? 洗ってやるぜ!」

ちひゃー「ぐぅぅぅにぃぃぃゃぁぁあああ!!」

現れた襲撃者は、前回のハンマー使いとはまるで違う格好をしていました。
茶色模様の化学防護服に、ゴーグル付きの分厚いガスマスクを身につけています。

プシャアアアアアアアアア!!
背にはボンベ、手にはノズルが握られています。今度の殺人鬼は、硫酸使いだったのです。
シャワーのように噴き出す硫酸の雨が、ちひゃーの全身を濡らします。

ちひゃー「ぐぎぃがぁがぁぁぁぁっがぁああああ!!」ジュワワワワ

殺人鬼(硫酸)「ぐへへへへへ!!」プシャー

酸を浴び、ちひゃーの顔面は赤黒く焼け爛れていました。
ぶすぶすと焦げつくように大きな両目が煮立ち、皮膚と融合し始めています。

こあみ「とと、とかぁあああああああ!?」

悲惨な光景を目にし、こあみは恐怖から絶叫しました。
こまみは手を引いたまま、ひたすら逃げるよう促します。

こまみ「ちーーーーーっ!!」

カンカンカンカン……
階段を昇る途中、こまみは気づきました。あちこちに血痕が染みついたままになっています。
営業中は掃除も軽く済ませているのでしょう。殺されたぷち達の流血のあとが、生々しく残されています。

こまみ「ちー……」

そういえば、今自分が昇っている辺りは、先ほどこあみが死んだ地点でした。
それでも首を横に振って、こまみは走り続けました。

こまみ「ちーっ、ちーっ……」 こあみ「とかー……」

やがて、上階に辿り着きました。やはり機関室に身を隠すのがいいでしょう。

あふぅ「ナノ、ナノォ!」 やよ「うぅー!!」

こまみ「ちーーっ!」

後から、あふぅ達も続いてます。二匹にも隠れるよう、こまみは物陰から呼びかけました。

…………。
それから少し経ちました。どうも妙です。殺人鬼が、追いかけてくる気配がしないのです。
階段を昇ってくる音が、一向に聞こえません。

こまみ「……?」

ちひゃーを殺すのに、手間取っているとは思えませんでした。
時間をかけて嬲り殺しにしているなら、それはそれで恐ろしいですが。

ガコン! ウィーン、ガタンガタン……

突然、機械が動く音がしました。それは、ガタンガタンと鳴り続けています。

こあみ「と、とかー!」

こあみが指さしたのは、エレベーターでした。時計塔を昇る方法は、階段だけではなかったのです。

あふぅ「ナノォ!」 やよ「うぅ~!」

殺人鬼が、エレベーターを使って昇ってきているんだ。
慌てたぷち達は、物陰から飛び出し、機関室を離れようとします。

こまみ「ち、ちーっ!?」

こまみが出遅れました。こあみも、あふぅ達と先に行ってしまっています。

カンカンカンカン……
あふぅ「ナノー!」 やよ「うっう~!」 こあみ「とかー!」

殺人鬼が上ってくるなら、こっちは下りればいい。あふぅ達の思考は単純でした。
我先にと、階段を駆け下りて行きます。

こまみ「ちーっ! ちーっ!」

後を追うこまみは、息が上がっていました。二回連続で逃走劇を演じているのです。
疲労で呼吸が乱れ、足取りもおぼつかなくなっています。

こまみ「ぢっ!」ズルッ

階段の途中で、こまみは転んでしまいました。助け起こしてくれるぷちはいません。
こまみは嫌でも、見殺しにしてきたぷち達を思い出します。

こまみ「ぢーっ!!」

片割れの亡霊に、足をすくわれた気分でした。そしてこまみは、観念してしまいます。
よろよろと起き上がると、そのまま力なく座り込んだのです。

こまみ「ちー……」

これも天罰なのだろう。いっそ、飛び降りて自殺しようかとも考えました。

こまみ「……?」

しかし、またしても妙でした。そろそろ下りてきそうな殺人鬼が、なかなか現れないのです。
こちらの行動に気づいてないだけなのか、それとも――、

あふぅ「ナビャァァアアアアアアアアアアア!!」

下階から、あふぅの叫び声が聞こえてきました。こあみ達の悲鳴も重なります。

こあみ「とかぁああああああああ!?」 やよ「ううぅぅぅぅぅ!?」

見れば、あふぅ達があの殺人鬼に襲われていたのです。

こまみ「ち、ちーっ!?」

こまみは驚きました。てっきり、殺人鬼はエレベーターで上階に昇ったとばかり思っていたからです。

殺人鬼(硫酸)「ぐへへへへへ!」プシャー

エレベーターは、フェイントだったのです。あそこには、誰も乗っていませんでした。
昇降機を起動させれば、それに気づいて上にいるぷち達は下へ逃げてくるだろうと、殺人鬼は計算したのです。

あふぅ「ビぃぇえええええええええ!!」

そして下に残ったまま待ち伏せしていた殺人鬼は、まんまと下りてきたぷち達に奇襲をかけたのでした。
硫酸のシャワーで、あふぅとこあみの両目を焼き潰します。

あふぅ「ビャァアアアアアアアア!!」ジュワワワワ

こあみ「とぎぇぇぇぇぇぇえええ!!」ドジュウウ

視力を奪われては、逃げようがありません。転げ回る二匹に、殺人鬼は執拗に酸を浴びせかけました。
傍らには、顔面がケロイドで覆われたちひゃーの死骸が横たわっています。

殺人鬼(硫酸)「うゎーっははは!」プシャー

やよ「うぅ~~!! うっううーー!!」ζ*T0゚)ζ

助けることなんてできません。残っていたやよは、二匹を見捨てて駆け出します。
昇り降りの繰り返しですが、階段をまた上がり始めたのです。

こまみ「ちーっ!」

こまみの方も、思い直していました。逃げなくてはならない。
少しでも生き残れる可能性があるなら、がんばるべきだ。階段から機関室へと引き返します。

こまみ「ちー……ちー……」

隠れてやり過ごすつもりですが、いざという時には動かなければなりません。
こまみは、ロッカーに入っていた鉄製のスティックを拾いました。

こまみ「……」

これで殺人鬼相手に戦えるとは思っていません。けれど、あることをするためには必要な道具でした。

やよ「う~っ!」

それからやよも、機関室へ逃げ込んできます。
そして今度は、後ろから階段を昇ってくる音が続いてきました。

殺人鬼(硫酸)「逃がさね~ぞ~」カンカン

ここまで三匹を狩っています。残りは上階にいるとみて間違いありませんでした。

殺人鬼(硫酸)「よっと……」

殺人鬼が機関室へと入ります。身を隠すぷち達でしたが、こまみはともかくやよは助かりません。

チャリーン……

この裏技を使われるからです。床に落ちた10円玉に反応して、やよが飛び出します。

やよ「うっう~!」ζ*^O^)ζ ダッ

殺人鬼は躊躇なく、硫酸スプレーのレバーを引きました。

プシャアアアアアアアアア!!
やよ「う゛ぅぅえぅぅぅぅうううう!!」::U゚'0゙)ζ::

硫酸をもろに浴び、やよの全身が爛れ始めます。
さらに殺人鬼はやよの髪を掴み、ずるずると引きずりました。

やよ「う゛ぅ~~!! うぅぅぅぅ!!」::U Tp 。)ζ::

殺人鬼(硫酸)「せっかくの遊園地なんだから、おまえも楽しんでいけや!」グイッ

開けた扉の先には、大時計を構成する歯車が動いていました。
殺人鬼が、引っ掴んでいたやよの髪を、歯車と歯車の間に挟み込みます。

やよ「うっう!? うぅぅぅぅぅう!!」

歯車の回転に合わせ、やよの髪が引っぱられます。
そして綱を引くように、殺人鬼は反対側からやよの体を引っぱりました。

やよ「うぅ!? うぅ!? うぅぅぇぁあああ!!」

異物が挟まっても、回転は止まりません。歯車の引き込む力に、やよの髪がブチブチと抜け始めます。

やよ「ぅぅぅうううううううううううううあああああああああ!!」

ブチブチブチブチィ!!
グロテスクにも、やよの髪は頭皮ごと剥がされてしまいました。

やよ「うぇぇぇぇぇぁぁああああああ!!」::(。p゙Uil)::

殺人鬼(硫酸)「ゴキゲンな髪型になったな! ケアしてやるぜ!」ジャキッ

プシャアアアアアアアアア!!
真っ赤な肉が剥き出しになったやよの頭部に、硫酸が降りかかります。

やよ「うびびびぃぃぃぃゃゃぁぇぁあああああああ!!」::U#。p#):: ドジュウウウウ

殺人鬼(硫酸)「オラオラ!」プシャー

やよ「ぇぅぅぅぇぁぁあああああああぁぁああああ!!」

こまみ「ちー……!」ブルブル

あまりにも残酷な虐殺に、こまみは心底震え上がりました。
他人事ではないのです。次に狙われるのは確実に自分なのです。

こまみ「ち、ちー!」ダッ

行動するなら今しかありません。こまみは物陰から、エレベーターへと向かいます。

こまみ「ちー!」スッ

ぷちの身長ではエレベーターのボタンに手が届きません。
しかしこのために、こまみは鉄製のスティックを拾っておいたのでした。
棒を伸ばして、ボタンを押します。

ウィーン、ガタンガタン……

殺人鬼(硫酸)「!」

やよ「」U##p# )

やよを殺し終えた殺人鬼が、その音に気づきました。
すぐさま向かうと、エレベーターが起動して、下に降りるところでした。

殺人鬼(硫酸)「下等生物が文明の利器を使うとは、生意気だな!」

階段へと殺人鬼が駆け出します。エレベーターとどっちが早いか競走です。

カンカンカンカン……
殺人鬼が急ぎ降りてゆく様子を、こまみは物陰からじっと覗いていました。

こまみ「ちー……」

こまみは、エレベーターを起動させただけで乗ってはいませんでした。
殺人鬼が使ったフェイントを、そのまま自分も試してみたのです。

そして――、

殺人鬼(硫酸)「クソッタレが!」

一階に下りてきた殺人鬼は、もぬけの殻のエレベーターを見て、憤慨しました。
一杯喰わされた。まさか、ぷちがここまで頭を働かせるとは思っていませんでした。

こまみ「……」

カンカンカンカン……
今度は、急いで階段を昇ってくる音がします。こまみは、じっとし続けていました。
時間は稼げるだけ稼いだ。後は、ゲームオーバーまで見つからないよう祈るだけです。

殺人鬼(硫酸)「出てこい!」

殺人鬼は、なかなかこまみを見つけられないようでした。
マスクとゴーグルを着けているせいか、視界が不十分なのです。

こまみ「……」

結局そのまま、その時はやってきました。

『制限時間10分を経過しました! ゲーム終了です!』

救いのアナウンス。すぐにのこのこ出たりはしませんが、こまみは安堵の溜め息をつきました。

殺人鬼(硫酸)「残念だ……」

今回も、こまみは生き延びたのです。
しかし幸せなのかはわかりません。また次のハンティングにも出演させられるに決まっています。

こまみ「ちー……ちー……」シクシク

かといってどうすることもできず、こまみは泣き出しました。
係員達に連れ出される間も、泣き続けていました。

「二回とも生き残るなんて、しぶとい奴ですね」

「次は休ませてやろう。へろへろのままじゃ獲物役もこなせないからな」

こまみ「……ちー!」

助かった。もう追いかけ回されなくていいんだ。

安心したこまみは、泣き疲れて眠ってしまいました。



―――――ワイワイ、ガヤガヤ……

こまみ「ち、ちー?」

こまみが目を覚ますと、そこには他のぷち達もいました。

こあみ「とかー……」
ちひゃー「くっ!」
あふぅ「zzzzz」
やよ「うっう~?」

見覚えがあります。この部屋は……

こまみ「ち、ちーーっ!!」

ゲームに参加させられるぷち達の、控室です。
あれからどのぐらい時間が経ったのかはわかりませんが、自分はまたここに送られてしまったのです。

こまみ「ぢーーーーっ!! ぢーーーーっ!!」



「次、出場されるお客様のコスチュームは、ハサミ使いです」

「今度も逃げ切れるかどうか、見ものですね」


『準備の方はよろしいでしょうか?』

殺人鬼(大バサミ)「……いつでもいいです」チョキーン、チョキーン


――クロックタワー・ぷちどるハント3に続く


  • 最終更新:2014-02-20 15:04:39

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