密漁海岸

※荒木御大の読み切り漫画のパクリ


――八月。事務所にて
P「鮑(アワビ)のリゾットだと」

小鳥さん「……」

P「アワビは薄く切られて半生、一緒に入っているのは細かく刻まれた冬瓜、
それとすりおろされたトロロイモ」

――実食。
P「う……美味すぎる! フランチャコルタ(ワイン)とアワビの肝のソースが、
チーズと臭みなく噛み合う!」

ガタンッ!
P「なんだ…この料理は…! うぉおおおおっ! 疲れ目がスッキリしたああっーー!」

小鳥さん「アワビにはタウリンが豊富で、視力回復効果がありますからね」

P「感動させていただいた。いやはや小鳥さん、また料理の腕を上げましたね」

小鳥さん「ありがとうございます」

P「ところでこのアワビ、先日海水浴に行った時に購入したとか?」

小鳥さん「はい。でも貴重な黒アワビは漁師さん達も売ってくれないんです。
あの海岸の岩場には、アワビが多く生息していることもわかったんですが」

P「そうなんですか。漁業権の関係で、貝類は勝手に採っちゃいけないんですよね」

小鳥さん「そこでお願いがあります、プロデューサーさん。
私と一緒に、あの海岸にアワビを採りに行っていただけませんか?」

P「なぬっ!?」

小鳥さん「とりわけ天然のアワビは、美容効果も高いと言われています。
コラーゲン、アンチエイジング。私としては是非とも大量に欲しい食材です。
そして手に入るのなら……私の生涯において最高の特別料理も作ることができます」

P「オイオイオイオイオイオイ。売ってくれないものを採りに行こうって誘ってるのか?
それって『違法』ってことだろっ?!」

小鳥さん「採るのは私です……。夜行くのであなたは電灯を照らしてくれるだけでいいです」

P「ナアナアナアナアナアナア。ライトを照らすだけって……。俺らは健全な社会人なんだぜ? 
しかも! アワビは稚貝を海に放して成長して収穫できるまで五年以上っ!
アイドルを育ててる身としては、漁師達の日々の苦労がよくわかるっ!!」

小鳥さん「『密漁』をします」

P「だから気に入った」ドン

小鳥さん「ベネ(良し)。そうおっしゃっていただけると思ってました」

P「単なる好奇心ですよ。でも小鳥さん、潜水術には長けているんですか?
アワビは、深いところでは水深5メートルから10メートルの範囲にいるそうですが」

小鳥さん「私が採ると言いましたが、水に潜ってもらうのはあの子達です。
私はそれをロープで縛って、上から操るようにします」

ゆきぽ「ぽへぇ~♪」ニヘラ
やよ「うっうー!」ζ* ゚ヮ゚)ζ
いお「もっ!」
たかにゃ「しじょっ!」

P「……本気ですか? あんな連中、釣りエサのミミズほども役に立たないと思いますが?」

小鳥さん「適役を選んだつもりですよ? やよちゃんは魚獲りの名手、
いおちゃんは電灯(ビーム)役で、ゆきぽちゃんは岩場でも穴を掘って進めます。
たかにゃちゃんは海の幸が食べたくて、乗り気でいます」

たかにゃ「『垂涎』」

P「あ、ライトって、いおのビームだったんですね」

小鳥さん「あふぅちゃんはやる気がなく、ちひゃーちゃんは泳げない。
ちびきちゃんも怪獣呼んで騒がれると面倒で、はるかさんも水はNG。
よって、このメンバーが最適だと判断しました」

P「なるほど。まあ自分で潜るのは危険もありますしね」

小鳥さん「いまはまだ夏ですから、あの子達も海に入るのを嫌がりません」

アワビの密漁は、時代が時代なら「死刑」にされるほどの重罪。
海岸には監視小屋に加え、カメラまで設置されています。
小鳥さんはぷち達を用いて、どうにかアワビを手に入れようとしていました……。


――その夜
小鳥さん「アワビは夜行性で、暗闇に乗じて岩の上を動き回ります。
ぷちどるの大きな目なら、暗い水の中でも発見できるでしょう」

一行は現地に到着していました。監視カメラを避け岩場を外側から進みます。

いお「もっ!」ピカッ

威力を落としたいおのビームが、懐中電灯の代わりでした。
潜水組はゆきぽ、やよ、たかにゃの三匹です。

小鳥さん「ここらでいいでしょう。みんなに潜ってもらいます」

ゆきぽ「ぽぇっ!」
やよ「うっうー!」
たかにゃ「『始業』」

用意された装備は、目を保護する水中ゴーグルだけですが、
ゆきぽとたかにゃはスコップと紙手裏剣もそれぞれ所持していました。
たかにゃの紙は、この時のために防水加工した代物です。

ドッボーン!
波の押し引きの力は侮れません。飛び込んだ三匹には、命綱が体に巻きつけられていました。
小鳥さんが岩場の上からそれを引っぱります。プロデューサーは、いおに指示を出します。

P「よし、あそこを照らしてみろ」
いお「もっ!」ピカッ

この辺りの海は比較的綺麗であり、光を照らすと夜でも水中が覗けます。

P「あっ、見えた!」

小鳥さん「ここからでもアワビの姿がわかりますね」

たかにゃ「しじょじょじょじょ!」スパーン
ゆきぽ「ぽぇーっ!」ザクザク

岩に強く張りつくアワビは、剥がすのに道具が必要になるほどです。
たかにゃは紙手裏剣で、ゆきぽはスコップで岩をえぐり、アワビを引き剥がしてゆきます。
そうして集めたアワビを持って、浮上を繰り返します。

P「カゴを下ろすぞ。その中に放り込め」

大きくて形の良いアワビが、カゴに入れられてゆきます。

P「うじゃうじゃだぁーーーッ!! なんだこの大きさはーーッ!!
ワハハハハハハハ。でかいっ、小鳥さんこれッ! 25センチはあるぞ」

小鳥さん「ウハハ。アハハハ」

二人は大興奮です。このサイズのアワビなら、売れば単品で一万は超えます。
最高級食材なので、食べるのも貴重な経験になります。

やよ「うっうー!」ζo^O^)ζo从゚゚ バシャーン

一方、やよは関係無い魚や貝を採るのに熱心になっていました。
やよにとって綺麗な海は、食べ物(生き物)がいっぱいいる夢の世界なのです。

小鳥さん「この岩場って、タコまで寄ってくるんですね……」

カゴの中に、うにょうにょとした赤い生物までが放り込まれていました。
実はタコも夜行性であり、しかもアワビを食するので海岸へやってくるのです。

P「おい! おまえもアワビだけ狙え!」

やよ「うっう~♪」ζo^3^)ζ o从゚゚ ザパーン
いお「もっも~♪」

しかし注意も聞かず、やよはおいしそうに見える魚に片端から手をつけていました。
調子に乗って、いおもそれを応援しています。

ブスリ!
やよ「うっ!? う゛ぅ~~っ!!」Σζ* T0゚)ζ

すると、やよが何やら悲鳴を上げました。いおがビームを向けてみると、
水面近くに無数の羽を広げたような、縞々の魚が泳いでいるのを見つけました。

小鳥さん「どうしたんです?」

P「あー、あれはミノカサゴですね。ユニークな姿をしていますが、
ヒレに毒針が生えていて、刺さると激痛が走ってショックを起こします」

やよ「うぅぅぅぅ!!」::ζ*iTo゚)ζ::
いお「もっ、もーっ!!」

P「大丈夫、死ぬことはないみたいだから。反省して、真面目にアワビを採れ」

いお「キーーーーッ!!」ミョンミョン

冷たく言い放つプロデューサーに、いおが抗議します。
そうこうしている間、ゆきぽとたかにゃの方にも異変が生じていました。

ゆきぽ「ぽぁあああっ!?」
たかにゃ「しじょぉおっ!?」

小鳥さん「んっ、急にロープが重くなって……」

見ると、岩から剥がされたアワビが、今度はぷち達の体に吸い付き始めていたのです。
大型のアワビに複数まとわりつかれ、ゆきぽとたかにゃは溺れかけていました。

P「小鳥さん、危ないっ!」

命綱が引っぱられ、小鳥さんはあわや海中に転落しそうになりました。
プロデューサーも手を貸しますが、暴れるぷち達をなかなか引き上げられません。

ゴボゴボ……
たかにゃ「しじょ、しじょぉおお!!」ヒュンヒュン

完全に水中に引きずり込まれ、たかにゃは必死で紙手裏剣を振るいました。
アワビが振り落とされてゆきます。しかし……

ブチンッ!
小鳥さん「あれ、軽くなった?」

なんとたかにゃは、勢い余って自分の命綱まで切ってしまったのです。
間が悪いことに潮の流れが変化し、より強い波にたかにゃは引き寄せられました。

ザザーン!!
たかにゃ「しじょっ、ビャーーーーッ!!」

沈むのは避けたものの、今度は波にさらわれてしまいました。
水中で揉まれたせいで平衡感覚を失い、たかにゃはまともに泳げなくなっていたのです。

ゴボゴボ……
ゆきぽ「ぽぉおおおおっ!!」

片やゆきぽは、海底まで沈みかけていました。
水中から脱出するべく、岩場にスコップを突き立てます。

ザクザクザク……
ゆきぽ「ぽぇええええっ!!」

えぐられた土砂で、海が瞬く間に濁ってゆきます。地上まで、岩場を掘り進むつもりでした。

ガブリッ!
ゆきぽ「ぽぎゃぁあああああっ!?」

しかし途中で、岩の隙間を棲家にしていたウツボに噛みつかれました。
ちょうど巣穴に掘り当たってしまったのです。

ウツボ「ガブガブ」
ゆきぽ「ぽぇっ、ぽぇぁあああっ!!」ガボゴボ

アワビはタコの食糧になり、タコはウツボの食糧になります。
生き物が集まる場所では、必然的に食物連鎖が起こるのです。

小鳥さん「あーもう、どうなってるんですか!」

ちょっとした騒ぎになってしまい、そしてそれは密漁が発覚する結果となりました。

ナンダー、オトガスルゾー

P「っ!? まずい! 地元の係員に気づかれたようです!」

小鳥さん「えっ!? ヤバ……」

ヒカリガミエルゾー、ナニヲシテイルー

いおのビームも目印になります。すぐに岩場を離れなければなりません。

小鳥さん「行きましょう! カゴを引き上げて!」

アワビの詰まったカゴを、プロデューサーが抱え上げます。
戦利品は貝だけでなく、タコや魚も入っていましたが……

P「げっ!? ヒョウモンダコだ!」バシッ

赤いマダコの他に、色鮮やかなそのタコは混じっていました。
猛毒を持つ殺人タコです。プロデューサーが慌てて払い落とします。

やよ「う゛う、ぅぅ……」::ζilTp。)ζ::
いお「もっもっ! キーーーッ!!」

やよは、まだ海に浸かっています。早く助けろといおは叫びました。
容態が異常なほど悪化しているようでした。

P「あいつ、ヒョウモンダコに噛まれてたな……」

やよ「ぅぅ……」::ζ* ゙p゙)ζ::

手当たり次第捕獲していた際、やよはヒョウモンダコから毒を注入されていたようです。
恐ろしいことにヒョウモンダコは、噛まれても痛みを感じないのです。
それでいてその毒は、フグと同じテトロドトキシンです。

P「自業自得だし、もう助からん。置いて行くぞ」

数分で、麻痺と呼吸困難の症状が現れます。ぷちに、病院まで持つ抵抗力はありません。

いお「キーーーッ! キーーーッ!!」ミョンミョン

P「ああうるさいな、だったらおまえが助けろよ!」

ドンッ、ボチャーン!!
いお「もぉおおおおおっ!?」

暗い海に、いおは蹴落とされました。逃走の足手まといになるだけです。
まとめて見捨てるべきだと、プロデューサーは判断しました。

いお「もっ! もっ!」ザブザブ
やよ「ぅぅ……ぅ……」::ζil 。p゙)ζ::
いお「もーーーっ!!」

小鳥さんもすでに命綱を離していたので、このままでは溺れるだけです。
やよの手をとり、いおは岩場にしがみつきました。波の引力は強く、今にもさらわれそうです。
おまけに見てきた通り、周囲は毒を持つ要注意生物がウヨウヨいます。

いお「キーーーーッ!!」

危険がいっぱい、これぞ海です。知らずに遊ぶのは命取りです。
魚の姿を目にし、いおは取り乱してビームを放ちました。
フジツボやイソギンチャクにまで恐怖を感じ、ビームを乱射します。

バシュッ!
やよ「ぅ゛……!」ζil 。o;.;∴;.

するとそのうちの一発が、やよに当たってしまいました。
即死でした。手加減なしだったため、やよの顔面は消し飛んだのです。

いお「もぉおっ!? もぉ、もぉぉおお!!」

衝撃で手が離れたやよの死体を、波が持ち去ろうとします。
いおは泣き叫び、岩場から追いすがろうとしますが、やはり波に呑み込まれます。

ゴボゴボ……
いお「もぉっ……!! も……」

そのまま、いおは岸から遠ざかって行きました。
たかにゃ同様、どこかに辿り着かなければ魚のエサ確定です。

やよ「」ζ*。;.,. プカプカ

魚を食べ物としか考えていなかったやよは、一足先に魚に貪られていました。
汚いエサで申しわけないですが、これで海の生き物達が育つといいですね。

――その頃、小鳥さんとプロデューサーは、岩場から脱出していました。
岩陰に停めてある車に乗って、帰還する手はずです。

小鳥さん「プロデューサーさん、早く!」

荷物持ちがプロデューサーなので、運転手は小鳥さんです。
エンジンのかかった車に、大量のアワビが積まれます。

ズボッ!
ゆきぽ「ぽぇええええっ!!」

そこへ、海中から岩場を掘り進んだゆきぽが、地上へと抜け出してきました。
ウツボに噛まれて全身血まみれの姿は、半ばホラーでした。

P「こいつが捕まると、面倒になりそうだな……」

騒ぎを大きくしないために、ゆきぽも連れ帰ることにしました。
二人と一匹を乗せ、車が海岸を離れてゆきます。
色々と犠牲を出したものの、密漁は確かな収穫を得て終わったのでした……。


――後日。事務所にて

亜美「タコは『知能』がかなり高い生物なんだって~。アニマルチャンネルで見た。
『ビン』の中に入っている食べ物を…」

食卓代わりの机を囲み、アイドル達が料理を口に運びます。

亜美「足の吸盤使ってクルクルフタ開けて…とっちゃうんだよ~~。
私はクルクルフォークを使って食べちゃうもんねェ~~」

深皿には、赤いソースの中にタコが沈んでいました。

亜美「ンマぁああ~~~~い! ボーノ」

P「小鳥さん……。これ、タコ料理だ。『タコのトマトソース煮』。
新作アワビ料理って言ったのは、俺らにはないのか?」

プロデューサーが目を向けた先では、小鳥さんが鏡を見てうっとりとしていました。
足元には、先日同じことをしていたゆきぽが、包帯グルグル巻きで安置されています。

小鳥さん「ふぅ……美しい。アワビの効果ね」

ゆきぽ「ぽぇ~……」

P「(……まあいいか)」

美味なる幸せ…。

終わり

  • 最終更新:2017-09-11 06:46:47

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード